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【研究成果】脳言語処理 方言に差異


 本学文学部研究科小泉政利准教授らの共同研究グループの成果により、日本語における単語のピッチアクセント(注1)を処理する際の脳活動での左右の半球の反応差が、東京方言話者と東北地方南部方言話者間で異なることが発見された。
 


 日本語の多くの方言では、同じ音の単語の意味の違いをピッチアクセントの違いによって区別を行っている。だが、東北や九州地方の一部にはピッチアクセントを使わない、無アクセント方言と呼ばれるものが存在する。過去の研究から、母語での単語の意味に関わる音の違いに対しては左半球優位を示し、文の抑揚などの違いにはそのような優位性が現れないことが知られていた。しかし、同じ言語内の方言の違いにおいても同様の変化が見られるのかは分かっていなかった。



 そこで、研究グループは、ピッチアクセントを使う標準語の東京方言話者と無アクセント方言を使う東北地方南部方言話者を対象に、異なる方言環境で育った話者間で脳反応に違いがあるのかを調べるため実験を行った。実験内容は、ピッチアクセントを聞いた時の東京方言話者と東北地方南部方言話者の脳反応を近赤外分光法(注2)を用いて測定を行うというものである。


 その結果、「雨」と「飴」のようにピッチアクセントで区別される単語を聞き分ける際に、東京方言話者は左半球優位の反応を示したのに対し、東北地方南部方言話者は左右同程度の反応が起こっているという事実が判明した。


 現代では放送メディアなどの影響で、異なる方言環境で育っていても特に若い世代では標準語に接する機会が多くなっている。そのため、研究に参加した東北地方南部方言話者は標準語と東北地方南部方言のバイリンガルとも呼べる。それにも関わらず、東北地方南部方言話者がピッチアクセント処理において東京方言話者と異なった脳反応を示した。このことは、言語処理における左半球優位性には育った環境が影響している可能性を示す。


 この研究結果は、脳と言語発達に関する知見を深めることに役立ち、教育分野や医療発達分野に貢献するものと期待される。小泉准教授は、「表面上は標準語を理解しているように見えても、育った環境によって同じ言語内の言葉であっても脳の働きが異なってくるという事実は興味深いものである。今後この研究結果は、英語などの第二外国語の習得などに生かされていく可能性がある」と述べた。



注1…語の意味の区別を行う音の配列のこと。例えば、標準語で「雨」は高い―低いというピッチ(声の高さ)パタンで発話される


注2…生体への透過性に優れた赤外領域の光を利用して、大脳皮質の血液中のヘモグロビン変化量を測定し、血液中のヘモグロビン酸素状態をもとに脳活動を調べる装置
研究成果 1713828526341680462
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