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Reaxys PhD Prizeファイナリストに選出 理学研究科出身 梅宮茂伸さん

 理学研究科化学専攻出身の梅宮茂伸博士(現・米スクリプス研究所Baran研究室博士研究員)が、2015 Reaxys PhD Prize(*)のファイナリストに選ばれた。在学当時研究していた「プロスタグランジン(PG)の3ポット合成」が評価された。ファイナリストは約450の応募のうち45名で、受賞者は9月に決定する。

 梅宮博士は以前、有機触媒を用いた[4+2]環化付加反応を応用し、[3+2]環化付加反応を開発。さらに発展としてPGの全合成を試みた。
 手法としてはまず、[3+2]環化付加反応で五員環を形成する。次にHorner-Wadsworth-Emmons反応により炭素骨格を完成させる。最後に細部の官能基を変換して目的のPGを得るというものだ。
 官能基の変換では、報告例がほとんどなかったニトロアルケンからエノンを一段階で得る反応の開発が課題だった。徹底的な条件検討を行い、求核性を持つ塩基であるDABCOを用いることで解決。PGA1メチルエステルが得られ、次いでエポキシ化と還元反応を行うことでPGE1メチルエステルを得ることに成功した。
 さらに梅宮博士は、全合成に要するポット(反応容器)数の低減にも着手した。ポット数の低減は精製操作の削減に繋がり、精製に必要な溶媒量や作業時間の削減、実験操作の簡便化が達成できるからだ。
 まずニトロアルケンからエノンへの変換で用いた溶媒が次のエポキシ化を阻害するため、溶媒を減圧留去により除去。またこの濃縮の最に起こる副反応を、DABCOを中和することで抑制した。さらにエポキシ化は塩基性条件、次の還元反応は弱酸性条件で進行する。そこで2つの反応の間に中和を挟み、塩化アンモニウムを加えることで条件を整えた。
 最終的に、脱水を含めた4つの反応を1ポットで行い、PGE1メチルエステルを3ポットで合成することが可能となった。従来の手法ではPGE1メチルエステルの合成には19ポットを要しており、合成経路が飛躍的に短縮されたといえる。
 梅宮博士は現在、未だに合成例の無い、特異な構造を要するアルカロイドの全合成研究を行っている。新規に開発した有機合成法を駆使し、市販の安価な原料から複雑な構造を持つ天然化合物を短工程かつ効率的に合成する手法の確立を目指す。

(*)……博士課程に在籍または博士号を取得後1年以内の化学系研究者を対象とした国際賞。
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