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【研究成果】メタボ病態の一機構 解明 ~肝臓のアミノ酸代謝が関係か~

 肥満が進行するにつれて血中の中性脂肪濃度が上昇するメカニズムが解明された。医学系研究科糖尿病代謝内科学分野(兼・東北大学病院糖尿病代謝科)の片桐秀樹教授らの研究グループが突き止めた。



 人をはじめとする多臓器生物では、ホルモンや脳を通じた神経系により恒常性(ホメオスタシス)が維持されている。恒常性には血糖値や体重の維持、摂取した栄養の代謝調節などさまざまな種類が存在する。片桐教授らはこのうち神経系を軸として、臓器間ネットワークによる個体レベルでの代謝調節について研究を行ってきた。

 今回テーマとなったのは肝臓によるアミノ酸の代謝。肥満、すなわち全身が過栄養のとき、並行する状態の一つとして肝臓のアミノ酸量が増加する。教授らは肝臓のアミノ酸量のみが過剰かつ肥満ではない状態に着目した。マウスに対してトランスポーターを用いてアミノ酸を血中から肝臓へと流入させ、経過を観察した。その結果、食後の血液において中性脂肪濃度の急激な上昇がみられた。これにより肝臓におけるアミノ酸量の増大が血中の中性脂肪濃度の上昇に繋がっていることが示唆された。

 次に教授らは肝臓中にアミノ酸が流入する経路を遮断。同様に経過観察を行うと、血中の中性脂肪濃度は上昇しなかった。この結果から示唆が正しかったことが確認され、二つの栄養素の代謝が互いに関係し合っていることも分かった。

 さらに研究が進められ、次に示す機構が明らかになった。肝臓内のアミノ酸量が増加するとその情報に対してシグナルが活性化する。情報はシグナルを通じて迷走神経を伝わり脳へ到達。すると脳は交感神経を通じて脂肪組織に対し、中性脂肪分解酵素(LPL)の産生を低下させるよう指示を出す。これを受けて血中では中性脂肪が分解されず、結果として血中の中性脂肪濃度が上昇する。

 血中の中性脂肪濃度の上昇は肥満およびメタボリックシンドロームの主症状の一つで、悪化すると動脈硬化を引き起こす可能性がある。今回の解明を受け、今後の治療や予防の開発が期待される。また片桐教授らは引き続き代謝調節について研究を進めるという。「脳は病気の予防や抗老化に関わる高次の働きを担っている。これらのメカニズムを追求していければ」と教授は語った。
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