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【特別インタビュー】仙台文学館館長 小池光氏~言葉によって『生きる力』を強く~

 「言葉を磨き、言葉を活かして、『生きる力』を強くしてほしい」。青葉区北根にある仙台文学館の館長で歌人の小池光さん(68)は、文学館に訪れることの意義をこう話す。館長に就任して今年で10年目。「人間はうれしいときも傷つくときも言葉だから」との考えで、小池さんは言葉とふれ合えるアクティブな文学館づくりを目指してきた。




 仙台文学館は台原自然公園に隣接する敷地の中にあり、豊かな自然に囲まれた施設。昨年度の入館者数は年間約6万3000人に上る。常設展示では、東北に関わる文学者だけでなく、広く全国の作家を取り上げる。年に2、3回特別展を開き、今年で19回を数える「ことばの祭典」など市民参加型イベントも催している。小池さんは「言葉に関心がある人にとっては恵まれている施設」と胸を張る。

 2007年に館長に就任して以来、毎月、短歌講座を開く。市民の愛好家だけでなく、県外から訪れる熱心な参加者もいるという。「講座は新しい出会いの場。いろいろな人に知り合い、教わることも多い」と感慨深げだ。家族や老い、介護など参加者の日常を詠んだ短歌が多く、講座の最後に参加者の短歌を冊子にまとめる。「いろんなことを聞き、短歌を詠んで、『生きる力』を作る力になれたと思う」。参加者の声を聞き、自身の思いが活きていると実感する。

 小池さんは宮城で生まれ、仙台一高を卒業後、東北大に進学した。当時、全国の大学は学生運動の影響に揺れており、東北大もその渦中にあった。自身も運動に参加したといい、「とがっていて、血の気の多い青年だった」と振り返る。一方で、恋愛をしたり、分からないながら難しい本を読んだり、思い出は様々だ。「背伸びしていたけど、いろんな出会いがあった青春だった」と目を細める。

 小池さんが短歌と出会ったのも、東北大生だった23才のとき。偶然、立ち寄った古本屋で当時、新進気鋭の歌人・春日井建の歌集を手に取った。「短歌が新鮮でかっこよかった。自分をはめる型を短歌に求めた」。この出会いを契機に短歌のとりこになり、読むそばから短歌を作り始めた。

 発表の場を求めて短歌結社の「短歌人」に入会。「作品が活字になるとうれしかった。仲間が短歌を褒めてくれて、それが深入りした理由」と話す。高校教師を勤める傍ら創作活動を続け、32才で第一歌集『バルサの翼』を刊行。歌集は現代歌人協会賞を受賞した。「節目ごとに賞をいただいた。だから、今も続けられている」と、周囲の声を弾みに創作への意欲は尽きない。

 電車に乗り窓の外の景色を見ながら、また手元に置いた斎藤茂吉の歌集をめくりながら、小池さんは創作に取りかかる。最新歌集『思川の岸辺』(KADOKAWA)もその中で編まれた。「短歌は人と人を結びつける力があるし、自分が支えられ励みにもなる」と短歌の良さを語る。

 「何か人のやっていないことをやれ。それに、専攻にこだわらずに取り組め」。東北大生に熱いまなざしを向ける。人がやっていないことで一人前に達するまでに10年かかると、これまでの経験から感じたという。「二足のわらじぐらい履けずにどうする。二足でも三足でも。大学はそれを見つける場所」と、小池さんは東北大生に期待を寄せる。
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