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【50周年記念企画】⑤寄稿 ~報道部部長 尾崎彰宏教授~

 講義を受講したある学生に頼まれたのが縁で、数年前から報道部顧問なるものを引き受けている。とはいってもあまり真面目な顧問でもなく、たまに部員が事務上の用向きで尋ねてくるとき、ほんの一時新聞事情を仄聞するといったところだ。だから、偉そうに学生新聞の昨今など語れるものではないが、それなりの関心はもっている。




 学生新聞の重要さは昔はさておき、その役割は、今こそもう一度再認識されるべきだと感じている。私が大学に入った70年代の中ごろは、すでに学生運動は下火であった。それでも昼休みともなるとマイクを握りアジ演説をする活動家は毎日見られた。気がついてみるといつの間にかそんな光景は姿を消してしまった。語るほどの問題がもはやなくなってしまったのだろうか。まさかそんなことはあるまい。精一杯、背伸びして社会や政治、そして生きることについて声高に語って欲しい。ある人が「大切なことは手間ひまかかり、まことに面倒なものだ」と愚痴るのを聞いたことがある。その通りだが、若者の特権は、傍目には無駄とみえてもおもしろいと感じれば夢中になれることだ。むしろこの「手間ひま」がかかるから好きになる。

 自分自身のことを棚に上げていうのもなんだが、学生には思考に荒さが目立つことも否めない。しかしその分若者の目と感性には、嘘と本物をかぎ分ける鋭い直観力が具わっている。昨年話題をさらった「SEALDs」をあげなくとも、世の中の大半があたりまえだと感じる潮流に違和感を感じ旧弊や事なかれ主義を打破する起爆力をもっているのは、若者だ。

 学生新聞でもそうした若者の批判力を十二分に研ぎ澄まして欲しい。そして、みんなでとことん議論し「手間ひまをかけ」た企画を立て、常識的なことでお茶を濁すのではなく、異質な分野、できるだけ遠いもの同士を統合するようにチャレンジしてみてはどうだろう。そうしてはじめて、直感に裏づけられた新鮮な記事が書ける。学生新聞といえども、いや学生新聞だからこそ「天下の木鐸」たらんとする気概をもとう。神経を濃やかにし、いまだはっきり顕れていないことにも敏感になり、読者がそれにはっと気づかされるように、あるいは読んで得をしたと思うように書こう。大切なことは「今」どう思われるかではなく、「未来」がどう評価するか、という姿勢だ。それが新聞の課題でありプライドである。そうしたしなやかさを身につけるために、人の何倍も勉強しようではないか。
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