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【特別インタビュー】作家 絲山秋子さん ~学生を通じ地元に恩返し 失敗から学ばせる~

 絲山秋子さんは、2006年に『沖で待つ』で第134回芥川賞を受賞した作家。直近では昨年『薄情』で第52回谷崎潤一郎賞を受賞。群馬県高崎市に在住し、作家のみならず高崎経済大学非常勤講師やラジオパーソナリティとしても活躍している。今回は絲山さんに自身の仕事や大学時代などについて話を伺った。




 ―どのようにして物語を思いつくか
 小説によって違いますが、大体最初に登場人物が思い浮かびます。書きたい内容が決まっている時は、その小説の中にどのような人が出てくるのか漠然と長い間考えて、それが分かった時が始まりです。駅で電車を待っている時や移動中など、他のことができない時に思いつくことが多いです。

 ―読者からの感想についてどう感じるか
 私が思っている作品と読者が受け止めるものは違うものですが、その違いを知ることができるのでありがたいです。こちらが思った以上に登場人物に優しく接してくださることを知って感動することが多いですね。

 ―地方都市の魅力は
 社会の色々な場所で活躍している人と知り合えるところにあると思います。これは地方都市に住んで小説を書いていることの大きなメリットです。例えば、初めて小説のための取材をした富山県では、最初は新聞社や美術館関係者の知人が多かったのですが、次第に知り合いが不思議なくらいどんどん増えて、お坊さんや魚市場で競りをする人など、色々な職業の人と出会いました。

 ―ラジオパーソナリティとして仕事を始めたきっかけは
 小説『海の仙人』を出した時に、FMyokohamaから本のコーナーに出演してみないかと誘いを頂いたことです。子どもの頃からずっとラジオが大好きでしたが、自分が出るということは全く想像もしていませんでした。学生の頃は人前で話すことは苦手だと思っていました。しかし、実際に出演し話してみると楽しく、意外と自分に合っていると感じました。

 ―ラジオで話すことのやりがいは
 年齢も生活の仕方も全く違う人たちとラジオを通じて同じ時間を過ごせることが、一番のやりがいです。聴いてもらうというより、一緒になって楽しむ時間を作っている感じです。心を開いて、リスナーからのメッセージに共感することを大切にしています。

 ―どのような大学時代を過ごしたか
 大学1、2年までは音楽系のサークルでバンド活動をし、3年からはゼミに入って同じゼミの仲間と遊んでいました。

 世論調査のアルバイトをしたこともあります。当時の世論調査は電話ではなく訪問で行っていて、あまり乗り気でないお宅にも訪問する時間帯を変えるなどして何度も何度も尋ねました。この経験が、後に営業職を目指すきっかけになりました。

 また、夏休みには毎年フランスの大学に行き、語学講座に出ていました。そこで色々な国の人と仲良くなって、その人たちの実家に遊びに行ったのは良い思い出です。

 ―今の大学生と絲山さんの頃の大学生を比べると
 今の大学生は現実的で堅実な人が多く、昔の学生と比べて真面目だと思います。私の頃の学生は、ブランドにこだわったり、今からしたら幼稚なところがあったりしましたが、若いのだから多少失敗しても自由に挑戦してみればいいと思っていたところがあると思います。

 ―高崎経済大学で教えることになったきっかけは
 8~15人の少人数クラスで今までにない授業を開講してほしいという依頼があったことです。群馬に移り住んでから固有のしきたりや文化などについて教えてもらうばかりでしたが、若い人を通じて地元の人に恩返しすることができる思ったので、お受けしました。

 ―開講しているインタビュー実習について
 これまでの職業取材で失敗しながら覚えてきたノウハウを、実習の形で学生に教えています。失敗することによってより多く学べることがあると思うので、わざと失敗させるように工夫しています。授業の最後には、相手のプロフィールを全く明かさないで外部の人にインタビューを行う実習を用意していますが、インタビューを通じて学生がその人を好きになるのが嬉しいですね。自分の働きかけが上手いと、相手がどんどん心を開いてくれます。それで相手を好きにならないことはないですよね。学生たちは、失敗と成功を両方体験して、やっただけのことを学んでくれていると思います。

 ―東北大生にメッセージを
 仙台は、都会的な部分と地方都市としての良さを持ち合わせた魅力的な街だと思います。東北大生の皆さんには、大学時代を楽しむとともに、仙台の魅力をどんどん発信してもらえたらありがたいです。
特別インタビュー 8885308406338308500
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