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【高校生向け】先人に学ぶ憲法の知恵 ~自由支える憲法に関心を~

 今年1月28日、本学川内南キャンパス文化系総合研究棟でみやぎ教育文化研究センターが主催する高校生向けの公開授業「憲法という人類の知恵」が開催された。本学法学部出身の憲法学者である樋口陽一名誉教授が講師として授業を行った。宮城県内の18の高校から合わせて48人の高校生が参加し、憲法について理解を深めた。




 授業の前半では、身近なところから憲法とは何かについて考えるために、幕末から明治に活躍した二人の仙台藩士玉蟲左太夫(たまむし・さだゆう)と千葉卓三郎(ちば・たくさぶろう)について解説した。参加した高校生は、樋口教授の解説に熱心に耳を傾けた。

 玉蟲左太夫は1860年に日米修好通商条約批准書交換使節団の幕府の正使に随行して渡米し、「航米日録」でその旅の記録を残した。その中で、アメリカと当時の日本とで大きく異なる点を挙げている。まず、重要なことは全てを討論と多数決で決めること。当時の日本では、皆で「談合」して話し合うことはあったが、最終的な決定は身分が上の者の名において決定されていた。また、法律が衆議(議会)で決定され、大統領といえども人民とともにこの法律を守ること。身分によって法が異なる身分社会で育った左太夫にとって、これは大きな驚きであった。さらに、左太夫は航海途中の嵐の際に身分の上下に関わらず懸命に協力し合う様子を目の当たりにして「この国盛んなるも故あるかな」と感銘を受けている。

 左太夫は、その後藩の動乱に巻き込まれ若くして切腹して果てた。しかし、左太夫は鎖国が終わったばかりの日本から渡米したにもかかわらず、アメリカの憲法とそれに基づく社会の本質をよく捉えており、このような優秀な人材が豊富にいたからこそ日本の近代化は成功したと樋口教授は語った。

 千葉卓三郎は、儒学、カトリック、ロシア正教など様々な思想遍歴を経た後、五日市学芸講談会を設立し五日市憲法として知られる私擬憲法「日本帝国憲法」を起草した。
五日市学芸講談会は、死刑廃止、女性戸主の参政権など、現代にもつながる問題についても議論していた。樋口教授は、「一般の民衆のレベルでこのような問題が議論され、自分たちが国家の担い手であるという意識が広く浸透していたことが、その後の立憲政治の発展につながった。」と語った。

 授業の後半では、高校生からの質問に対して、樋口教授が解説した。若者の政治的無関心にどう対処すべきか、ホッブスやロックといった古典的な思想を現代にどう生かしていくべきか、などといった質問が挙がった。

 授業後、樋口教授にインタビューを行った。

―大学生は憲法や政治にどう向き合うべきか

 憲法が保障する自由な社会においては、政治的な事柄に背を向けること、無関心でいることの自由も保障されています。しかし、そのような無関心な人が増えすぎると、無関心でいる自由を支える立憲政治も崩壊してしまいます。そういう問題を意識して憲法や政治に関心を持ってほしいと思います。

―社会科学者として必要なことは

 社会科学だけでなく自然科学を含む学問全般にいえることですが、素朴でもいいですから現状に何か疑問を持つことが大切です。リンゴが落ちる様を見て万有引力を発見したというニュートンの逸話のように、当たり前とされていることに疑問を持つことが学問の出発点だと思います。色々な体験をしないと疑問は生まれてきませんから、本を読んでばかりいるのではなく自然や社会の実際の姿に関心を向けることも大切です。

―憲法学者を志した理由は

 身の回りに自然科学の研究者が多かったので、自然と自分も研究者になろうと思うようになりました。また、高校で教科書を一切使用せず土一揆の解説に数回の授業を費やす個性的な日本史の先生の授業を受け、その先生の影響で社会科学の学問に興味を持つようになりました。また、公民の先生の憲法の講義を聴いて、社会科学の中でもとりわけ憲法学に興味を持ちました。

―東北大生に向けて一言

 東北大学は、いい意味で現実から少し距離をおいて、学界の流行や雰囲気に対して批判的である学風を持っていると思います。学生の皆さんも、こうした学風を大事にして勉学に励んでほしいと願っています。
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