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【研究成果】金属アレルギーの予防なるか ~恩師の言葉を胸に研究~

 薬学研究科の平澤典保教授はニッケルアレルギーの症状が体内の生理的濃度の亜鉛イオンによって抑制されることを発見した。そのため、近年増加している低亜鉛症の人はニッケルアレルギーの症状が悪化しやすい可能性がある。




 アレルギーは体外から入ってきたたんぱく質に対し、免疫が過剰に反応することによって引き起こされる。金属アレルギーが起こる原因についてはまだよくわかっていないが、金属イオンが体内に取り込まれる際に体内のタンパク質と結合し、異物と見なされることでアレルギーを引き起   こすと考えられている。

 10年ほど前にニッケルによってどのような炎症が起こるのかを調べていた平澤教授は、ニッケルが体内に取り込まれると好中球、マクロファージなどが集まることに注目した。好中球がニッケルの周りに集まることで、ニッケル周辺の酸性化が進み、さらにニッケルが溶けやすくなる。その溶けたニッケルイオンに反応しさらに好中球などが集まる悪循環に陥る。そしてより多くのニッケルイオンが溶け出すことで、比例してより多くのニッケルイオンが細胞に入り込み活性化し、炎症が悪化する原因になることがわかった。

 そこで、平澤教授は金属イオンの存在によって細胞によるニッケルイオンの取り込みがどのように変化するのかを調べた。マウスを用いた実験により、亜鉛イオンやコバルトイオンなどの金属がニッケルイオンの細胞内への取り込みを阻害することを発見。なかでも、金属アレルギーを引き起こすことが少ない亜鉛イオンの抑制効果に期待が持てる。

 今回の実験において、細胞内の物質を選択的かつ高精度に測定しなければならないという課題があった。そこで、平澤教授は工学研究科の成島尚之教授と協力し、最新の測定機器を用いた高精度の測定に成功した。平澤教授は、「医学と工学の協力はよく聞かれるが、生体応答に強い薬学ももっと工学と連携するべきだ」と薬学研究の今後について述べた。

 平澤教授は大学時代、恩師の「免疫機能が原因で起こる自己免疫性疾患は直接的に死につながるものは少ないが、生きていく上で本人や周りの人がずっと苦しい目に遭い続けるから、もっと研究しなければならない」という考えに触発され、アレルギー研究者の道を志した。それ以降、アトピー性皮膚炎や金属アレルギーなどのアレルギーの研究を行っている。現在、アレルギーを持つ患者に対しては症状を抑える対症療法をするしかなく、重症の患者に対しても副作用が強い薬を使うしかない。平澤教授は「基礎研究を進めることで、金属アレルギーやアトピー性皮膚炎を予防する、よく効き、安全な薬の開発を目指す」と今後の目標を語った。
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