【一言居士】ー2023年12月ー
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科学を表すscienceは、ラテン語で「切る」を意味するscire(スキーレ)を語源としている。思えば科学というものは、何かの対象をさまざまな角度から「切る」ことだと考えられるだろう▼国立科学博物館がクラウドファンディングを実施し、目標金額を大きく超える9億円以上を集めた。コロナ禍による影響や光熱費、原材料費の高騰により標本や資料の保管に支障をきたす事態となり、実施されたという▼本学植物園の標本庫「津田記念館」も運営費が枯渇寸前となり、クラウドファンディングを実施。目標金額を大幅に超える寄付で当面は存続の危機を免れたが、新体制の構築が急務となっている▼学問に多様性が必要なことは言わずもがなである。さまざまな角度から対象を切るための源泉となる資料や標本が欠乏すれば、やがて学問の発展を妨げることになる▼学問は先人たちの努力を受け継ぎ紡がれていく。その努力の結晶である標本や資料がないがしろにされ、知の開拓のための手段を「切らす」ようなことは、あってはならない。
(文責・渡辺湘悟)