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【研究成果】小鳥のさえずり 目的で変化 ~ヒトの言語習得過程の解明に期待~

  小鳥が目的に合わせ意図的にさえずりを変えられることが、本学大学院生命科学研究科の安部健太郎教授らのグループの研究で分かった。ヒトが言語を習得していく過程の解明につながることが期待される。



 これまでの研究で、鳥の鳴き声それ自体が変化していることは分かっていた。しかしその変化が意図的であることは証明されていなかった。


研究室内の小鳥(同氏提供)


 同グループは当時博士課程の学生だった河路琢図さんを筆頭に、小鳥のさえずりの音素を迅速に解析するプログラムを開発した。これを用いて、ジュウシマツがさえずり中で同じ音素を繰り返す回数が一定値を超えたとき、報酬として他の個体の動画を見せる実験を行った。結果、実験前に比べ同じ音素を繰り返す回数が増えたことが分かった。音素と無関係に動画を表示するとこの変化は生じないことから、小鳥は目的に応じてさえずりを変えることが明らかになった。



 研究当初は報酬にエサを用いたが、報酬としての価値が低いためか、さえずりの変化を誘発するのに効率的ではなかった。研究グループは小鳥の社会性が高いことに着目。他の個体の動画を見せる方法に切り替えたことで、小鳥のさえずりの変化がはっきりと表れた。



 安部教授の研究室では、脳が発達していく際に起こる変化の分子メカニズムを研究している。特に注目しているのが言語の習得過程だ。しかし同過程をヒトの脳を使って調べることは容易ではない。そこでスズメ亜目(鳴禽類)などの小鳥が、さえずりでやり取りをする際の脳のメカニズムを調べている。



 ヒトのコミュニケーションは文法規則に基づき音を複雑に変化させるが、他の動物は遺伝的に決まった音だけを出す場合が多い。他の動物の研究がヒトの研究に応用できるのか、疑問視する声があった。今回の研究で、小鳥もヒトと同様に目的に応じて音を変えることが分かり、さえずりの分析がヒトの言語習得過程のメカニズム解明につながることが示された。



 今回の研究では、さえずりの音素の意味まではまだ分かっていない。安部教授は、これからはさまざまな動画を見せて小鳥の共通の反応を人工知能で解析し、「小鳥がどのような感情でさえずりをしているか突き止めていきたい」と述べた。さらに今後の展望として「人間は言葉をただの音の連続として処理するだけでなく、高度な文法構造で文章を把握することができる。この時脳内で何が起こっているのかも、小鳥を使って調べていきたい」と語った。

研究成果 1250472723315293544
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