【書評】『アサヒビールの奇跡』 石山順也 講談社+α文庫
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ビール業界には伝説がある。業界最下位だったある企業が、内部改革・製品改革に取り組みシェアトップを奪還した。嗜好品かつ、寡占市場であるビール業界は大きな変動が起こりにくい。しかしこの企業は「スーパードライ」を引っさげ、バブル期のドライ戦争を勝ち抜いた。御存じ、この企業とはアサヒビールのことである。
『アサヒビールの奇跡』では、どん底のアサヒビールの改革に成功した3人の社長を中心に話が進められる。勿論、現場で戦ってきた社員たちも活躍も描かれており、伝説に彩りを添えている。
改革に着手し、アサヒビール復活に基礎を築いた村井勉も中興の祖である樋口廣太郎も、もとは住友銀行からの出向であり、銀行での出世レースからは外れている。しかし、彼らはくじけなかった。アサヒを日本一のビール会社へと変貌させた。与えられた環境、戦力の中で、最大限の力を発揮した功績から我々は学ぶべきことがある。思うようにいかなくても、望まぬ場所や団体に所属しても、最大限に自分の出来ることをやっていくという姿勢は必ず後に生きる、と証明しているのだ。
アサヒビールは優れたリーダー、優秀な社員、徹底した現場主義など様々な要因から奇跡を起こした。しかしそれは「スーパードライ」が当たりだのみであったわけではない。当たり前のことを当たり前に積み重ねていったことと、思い切りのよい決断によって支えられてきた。
だからこそ、アサヒビールの伝説は25年経った現在でも輝きを放ち、我々に勇気と感動を与え続けているのである。
(文責:鬼田)
(文責:鬼田)