【思い出バトン】 誤解生んだ鯉のぼり
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5月5日―男児の健やかな成長を願う端午の節句。男児がいる家庭の庭先には、鯉のぼりが揚げられる。
2人姉妹の我が家では、春になると、母が気合いを入れて買った立派なひな人形が並ぶ。ところが、保育園で男の子に鯉のぼりを自慢された姉は、母親に「わたしも鯉のぼりが欲しい!」とねだった。次の春からは、ひな人形の次に小さな鯉のぼりが飾られるようになった。
そのころ筆者は生まれたばかりで、髪は少なく、顔は父親似。会う人会う人に「2人目は男の子なのねぇ」と間違われていた。「いえ、こう見えて女の子なんです」。両親は訂正していたものの、庭に鯉のぼりが立つようになると、「やっぱりあそこのうちは男の子が生まれたんだわ」と、余計に誤解を生んでしまうようになった。
実際に庭先で鯉のぼりが泳ぐ姿は見たことが無い。周囲を気にした両親が飾らなくなってしまったのか、すぐに壊れてしまったのか。悠然と泳ぐ鯉のぼりを見かける度に、見たことのない庭先の小さな鯉のぼりに思いをはせる。
(藤井千尋)