【連載】【思い出バトン】受験時代の写真 今も支えに
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高校3年生の11月、誰もが受験勉強に本腰を入れる頃。10月の文化祭で茶道部を引退したばかりの私には、味気ない放課後が物寂しかった。引退以来美術室にこもり、顔を合わせなくなってしまった元部員を、同じクラスの元部員と共に訪れることにした。
「シルクスクリーンで作ってるんだよ」。芸術科で版画を専攻する彼女は常に忙しそうだった。部活の後はいつも畳の上でお菓子を並べてたわいない話をしたが、ここは彼女の陣地。机の上にはメルティーキッスがあるものの、その隣には莫大な数が収録された彼女の作品集。作品を見せてもらっているうちに、自然と進路の話になった。今となってはシルクスクリーンが何かも思い出せないが、夢を追い、着実な努力を重ねる彼女の熱は、日が沈んでいくことも忘れさせた。帰路につこうとする時、なんとなくこの時を残さなければと感じ、高校時代で唯一、何もない日に自撮りをした。
秋から冬へ、日が短くなるにつれて深まる、冷え込みと進路の悩み。未来を語り合った放課後の、屈託のない3人の笑顔は、就職活動に悩む今も私を支えている。 (田中芙郁)