【新入生向け2020・歓迎インタビュー】全学教育貢献賞 受賞 篠原歩 教授 ~新たなこと 挑戦し放題~
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本学大学院情報科学研究科所属の篠原歩教授が、昨年度の全学教育貢献賞を受賞した。篠原教授は昨年度、初学者向けとしては本学で初めて、本格的な機械学習の授業「実践 機械学習」を開講。学務審議会はこれを、本学の方針であるAI・数理・データサイエンス教育の模範と評価した。今回は篠原先生に、受賞に際しての思いや授業の詳細、新入生へのメッセージを伺った。
―受賞に際しての思いは
大変身に余る光栄です。かなりの時間と労力を授業の準備に費やし、自分なりに工夫を凝らしたつもりです。今後も、よりよい授業が提供できるよう精進します。
―授業の目的は
本学では今年度から、AIに関する授業が全学の一般教養科目として必修化されます。この動きに先行して、AIを支える基盤技術の一つである機械学習について、基礎的なプログラミングやデータの処理法と共に学ぶことが、この授業の目的でした。
―授業の内容は
まずは実践です。既存の機械学習アルゴリズムにデータを入力した結果を可視化し、どこを変えたら何が変わるのかを観察する。動作が分かってきたら、簡単なものならば、同じ働きをするプログラムを自分で作る。その過程を通じてプログラム言語Pythonの基本や関連するライブラリの使い方を学ぶというものです。
―指導上の工夫は
「閉じない授業」を意識しました。講義室の中で時間内に伝えられることは限られています。機械学習は急激に発展している分野ですから、ネット上に有用な情報が膨大に蓄積され、日々更新されています。加えて、無償で利用できる優れたオンライン教材もあります。これらを自力で活用するための橋渡しを行うのが私の仕事だと考えていました。
まず、今年度からのBYOD(Bring Your Own Device)化に向けて、受講生が自分で持ち込んだパソコンで演習し、家に帰っても同じ環境で講義の続きができるように配慮しました。機械学習の実習には大きな計算パワーが必要で、環境設定も機種毎に煩雑なのですが、クラウドサービスであるGoogle Colaboratoryを使うことで、普通のノートパソコンでも快適に演習し、環境設定の手間を省けるようになりました。
また、Slackを用いた質問対応を行いました。受講生は時間外にも質問でき、ティーチング・アシスタント(以下、TA)や私の回答を全体で共有しやすくなりました。
毎回の講義では自由課題を設定し、特に印象的な提出物は授業の中で紹介しました。時々私の想定をはるかに上回る見事な作品もあって、レポートの採点が楽しかったです。TAの学生さんたちも競い合って面白い回答例を示してくれました。受講生が他の人の工夫やプログラミング技術を学ぶ機会になったと思います。
―一般教養科目を履修する心構えは
高校までは、志望校合格という明確な目標があり、そのために必要な科目の勉強を重点的に行ってきたでしょう。AO入試の面接に備えて「自分の志望」「将来像」をピンポイントに絞って語る練習を積み重ねた人もいるでしょう。入学後は、もちろんその目標に向かって頑張って欲しいのですが、逆に、これまで自己暗示をかけてきただけかもしれない「専門」に、拘り過ぎないでほしいという気持ちもあります。「単位の取りやすさ」のようなうわさに惑わされずに、総合大学という環境を活かして、いろいろな分野に触れてほしいです。
―一般教養科目としてAIについて学ぶ意義とは
AI技術を応用した便利なウェブサービスやスマホアプリをみなさんは既に日常的に使っていると思います。話しかければ雑談の相手をしてくれるし、翻訳もできる。顔写真も美肌や老け顔に加工してくれるし、そっくりさんも探してくれる。AIは、今まさに世の中を動かす大きな波になっており、人間の意思決定に利用されつつあります。中には根拠が薄弱なものも相当に含まれているはずですが、AIを銘打つものは今後さらに増えていくでしょう。
そこで、世にいう「AI」の中で何が行われているのかを正しく理解することが重要です。それを専門的に勉強しようと思う人だけではなく、そうでない人たちにも、それぞれの分野、それぞれの視点から考えてもらいたいです。
―先生自身の研究テーマについて
授業で担当した機械学習の他に、文字列を効率よく処理するためのデータ構造とアルゴリズムの開発も行っています。情報検索の最も基本的な問題として、テキストデータの中から目標とするパターンと一致する部分を全て探し出す「パターン照合」があります。これを高速に行うための照合アルゴリズムや索引構造、圧縮されたデータを展開せずにそのまま照合する技術の開発などに取り組んでいます。
また、文字列の組合せ論的な性質を数学的に解明していくのも楽しいです。ゲームやパズルの解析も含め、計算機科学の様々な課題に貪欲に取り組んでいます。
―新入生へメッセージを
入学おめでとうございます。大学は、高校までとは大きく異なった自由な世界です。これまでに抱いてきた自分の目標を大事にしながら、ちょっと新しいことに挑戦してみるのもいいと思います。東北大は総合大学ですから、授業はもちろん、サークルや部活動にも多種多様な選択肢があり、あなた方を待っています。専門と無関係の授業を聴講するもよし、今まで文化系の活動をしてきた人は運動をするもよし。運動を頑張ってきた人は新しく楽器を触ってみるのもいいでしょう。マニアックな趣味を同じくする仲間が見つかることもあるかもしれません。
そういった意欲に溢れる学生さんたちを支援するのが我々教員の無上の喜びです。大学の授業はバイキング形式、食べ放題です。追加料金はいただきません。おなかいっぱいに食べてください。普段手を付けないものにもちょっと手を伸ばし、味わってみてください。あ、でも、いったんお皿に取ったものはちゃんと完食してね。
―受賞に際しての思いは
大変身に余る光栄です。かなりの時間と労力を授業の準備に費やし、自分なりに工夫を凝らしたつもりです。今後も、よりよい授業が提供できるよう精進します。
―授業の目的は
本学では今年度から、AIに関する授業が全学の一般教養科目として必修化されます。この動きに先行して、AIを支える基盤技術の一つである機械学習について、基礎的なプログラミングやデータの処理法と共に学ぶことが、この授業の目的でした。
―授業の内容は
まずは実践です。既存の機械学習アルゴリズムにデータを入力した結果を可視化し、どこを変えたら何が変わるのかを観察する。動作が分かってきたら、簡単なものならば、同じ働きをするプログラムを自分で作る。その過程を通じてプログラム言語Pythonの基本や関連するライブラリの使い方を学ぶというものです。
―指導上の工夫は
「閉じない授業」を意識しました。講義室の中で時間内に伝えられることは限られています。機械学習は急激に発展している分野ですから、ネット上に有用な情報が膨大に蓄積され、日々更新されています。加えて、無償で利用できる優れたオンライン教材もあります。これらを自力で活用するための橋渡しを行うのが私の仕事だと考えていました。
まず、今年度からのBYOD(Bring Your Own Device)化に向けて、受講生が自分で持ち込んだパソコンで演習し、家に帰っても同じ環境で講義の続きができるように配慮しました。機械学習の実習には大きな計算パワーが必要で、環境設定も機種毎に煩雑なのですが、クラウドサービスであるGoogle Colaboratoryを使うことで、普通のノートパソコンでも快適に演習し、環境設定の手間を省けるようになりました。
また、Slackを用いた質問対応を行いました。受講生は時間外にも質問でき、ティーチング・アシスタント(以下、TA)や私の回答を全体で共有しやすくなりました。
毎回の講義では自由課題を設定し、特に印象的な提出物は授業の中で紹介しました。時々私の想定をはるかに上回る見事な作品もあって、レポートの採点が楽しかったです。TAの学生さんたちも競い合って面白い回答例を示してくれました。受講生が他の人の工夫やプログラミング技術を学ぶ機会になったと思います。
―一般教養科目を履修する心構えは
高校までは、志望校合格という明確な目標があり、そのために必要な科目の勉強を重点的に行ってきたでしょう。AO入試の面接に備えて「自分の志望」「将来像」をピンポイントに絞って語る練習を積み重ねた人もいるでしょう。入学後は、もちろんその目標に向かって頑張って欲しいのですが、逆に、これまで自己暗示をかけてきただけかもしれない「専門」に、拘り過ぎないでほしいという気持ちもあります。「単位の取りやすさ」のようなうわさに惑わされずに、総合大学という環境を活かして、いろいろな分野に触れてほしいです。
―一般教養科目としてAIについて学ぶ意義とは
AI技術を応用した便利なウェブサービスやスマホアプリをみなさんは既に日常的に使っていると思います。話しかければ雑談の相手をしてくれるし、翻訳もできる。顔写真も美肌や老け顔に加工してくれるし、そっくりさんも探してくれる。AIは、今まさに世の中を動かす大きな波になっており、人間の意思決定に利用されつつあります。中には根拠が薄弱なものも相当に含まれているはずですが、AIを銘打つものは今後さらに増えていくでしょう。
そこで、世にいう「AI」の中で何が行われているのかを正しく理解することが重要です。それを専門的に勉強しようと思う人だけではなく、そうでない人たちにも、それぞれの分野、それぞれの視点から考えてもらいたいです。
―先生自身の研究テーマについて
授業で担当した機械学習の他に、文字列を効率よく処理するためのデータ構造とアルゴリズムの開発も行っています。情報検索の最も基本的な問題として、テキストデータの中から目標とするパターンと一致する部分を全て探し出す「パターン照合」があります。これを高速に行うための照合アルゴリズムや索引構造、圧縮されたデータを展開せずにそのまま照合する技術の開発などに取り組んでいます。
また、文字列の組合せ論的な性質を数学的に解明していくのも楽しいです。ゲームやパズルの解析も含め、計算機科学の様々な課題に貪欲に取り組んでいます。
―新入生へメッセージを
入学おめでとうございます。大学は、高校までとは大きく異なった自由な世界です。これまでに抱いてきた自分の目標を大事にしながら、ちょっと新しいことに挑戦してみるのもいいと思います。東北大は総合大学ですから、授業はもちろん、サークルや部活動にも多種多様な選択肢があり、あなた方を待っています。専門と無関係の授業を聴講するもよし、今まで文化系の活動をしてきた人は運動をするもよし。運動を頑張ってきた人は新しく楽器を触ってみるのもいいでしょう。マニアックな趣味を同じくする仲間が見つかることもあるかもしれません。
そういった意欲に溢れる学生さんたちを支援するのが我々教員の無上の喜びです。大学の授業はバイキング形式、食べ放題です。追加料金はいただきません。おなかいっぱいに食べてください。普段手を付けないものにもちょっと手を伸ばし、味わってみてください。あ、でも、いったんお皿に取ったものはちゃんと完食してね。
(20年2月20日取材)