【ニュース】小谷理事 国際学術会議会長に 日本人初
本学理事・副学長の小谷元子氏が10月14日、国際学術会議(ISC)の「次期会長」に選出された。日本人が理事会役員に選出されたのは初めて。「次期会長」は次期の会長として今期の役員も務めることとなる。小谷理事の「会長」の任期は2024年から3年間。
国際学術会議理事会役員は選挙で決定する。今回の選挙で小谷氏を含む14人が選出。前回の選挙で決定した会長を含め、15人が今期の役員となる。今回の選挙では東京大学白波瀬佐和子教授も財務担当副会長に選ばれている。
小谷氏は国際数学連合からの推薦で理事会役員選挙の候補者になった。次期会長になる可能性があることは認識していたが、多数の候補者の中で実際に自分が選ばれたときには驚いたという。小谷氏は「選ばれたことは大変うれしく光栄に思う。ただ責任ある仕事に対し、私で大丈夫なのかという気持ちがあるのも事実」と話す。
国際学術会議は世界最大の学術組織で、各国を代表する学術組織と、科学の一分野を代表する学術組織で編成されている。国際学術会議は、自らを、科学が社会のための公共財産であるという意味で「Global Public Goods」と定義している。それを踏まえ、国際学術会議はミッションとして、全ての科学からの声を社会に向けて発信することを目指している。具体的には、社会の諸問題を科学的要素に注目して分析。問題の解決に向けた方針や提言を作成し、社会に役立つような知見を世界に提示するのも活動の一つだ。
小谷氏は「社会のための科学」を世界に提供するには、国や学問の壁を超えた議論が大切だと話す。科学者が個人で世界をより良くしたいと考えても、世界を動かす力にはならない。さまざまな国や学問の境界を超えて、多様な知識や価値観、文化を持つ会員が、それぞれの見ている景色を共有し、議論を戦わせる。そうすることで初めて見えてくる人類が進むべき道がある。自分の専門分野については深い知見を持つ専門家が、他の人の声を聞くことができ、一緒に何かを作り上げるプラットフォームを国際学術会議では提供したいとしている。
小谷氏は今後の展望として、「今まで自分の専門分野である数学の研究は誠実に行い、科学が社会に対してできることも真面目に考えてきたが、社会と科学の関係は自分が考えてきた枠組みを超えて大きく現れた。しかし、それを解決するには、やはり科学が必要だと感じる」と述懐する。そのうえで、予想を超える昨今の社会問題の深刻化について、より社会に貢献したいという気持ちを強めた。一方で、科学の発展が本当に人類社会の幸せになっているのかという疑問を感じる人も多かったのではないかと話し、そういった人々に向けた科学の信頼回復と振興に努めたいと語った。