【入学お祝い号2022・研究成果】「心の中の身体は複数」 松宮教授 1911年以来の概念覆す
本学大学院情報科学研究科の松宮一道教授が、1月18日の本学のプレスリリースで「心の中の身体」が複数あることを明らかにした。
心の中の身体とは、体を動かすときに頭の中に存在する身体のモデルのこと。関節の角度が感覚信号によって伝えられる一方、腕や足など身体のパーツの長さは伝えられないことから、実際の物理的な身体から独立したモデルが形成されると考えられる。
心の中の身体は1911年に概念が提唱されて以来、一つであると考えられてきた。今回、左手と目を使って、モニターの下に隠した右手の輪郭を指す実験を行ったところ、実際の輪郭と、左手で刺した場所、目で指した場所がそれぞれで異なったことから、心の中の身体が複数あることが明らかになった。
物理的な身体と心の中の身体の不一致は、①思いもよらない場所にぶつかってしまう、②高齢者が運動機能の低下に適応せず転倒してしまう、③手術後切断されてなくなっているはずの腕に激痛を感じる(幻肢痛)―などの現象や症状を引き起こす。特に②や③のような運動機能障害の改善のためにリハビリが行われるが、現在のリハビリでは効果が持続しないという問題点がある。
今後心の中の身体の可視化がさらに進めば、腕や足、目、頭などの運動のための身体のパーツ(運動効果器)ごとに存在する心の中の身体から問題あるものを見つけ、物理的な身体と心の中の身体との差を直接的に改善することで、リハビリをより根本的、持続的にすることが期待される。
この研究は2016年3月より「視線行動に基づいた心の中の身体の可視化と身体適性化を支援する基盤技術の創成」として「科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業さきがけ」の一環で行われた。