建築業界に新たな光 新材料で破壊を予知 徐教授ら
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本学大学院工学研究科の徐超男教授らの研究グループは4月25日、外部から力を加えられた際の物体内部の反発力(応力)を記録する新材料を開発したと発表した。開発された新材料は、新たなマルチピエゾ材料である複合酸化物のPr添加Li0.12Na0.88NbO3。長期にわたって定量的に応力情報を記録することが可能だ。
あらかじめ新材料を塗布した対象物の表面にフラッシュ光を照射し、カメラや光センサーなどを用いて残光を計測すると、過去に発現した応力情報を得ることができる。IoT技術と組み合わせることで、構造物の点検や耐久年数の予測を安全に行うことが可能だ。また構造診断検査の人手不足解消や経費削減が期待される。
本研究は徐教授がかつて勤めていた産業技術総合研究所と、佐賀大との共同研究。当時、国家プロジェクト「シナジーセラミックス」に参加し圧電体による構造セラミックスの破壊予知の研究をしていた。圧電体とは、力学的エネルギーと電気的エネルギーの相互変換が可能な物質だ。徐教授は同プロジェクトで、圧電体薄膜を対象の構造セラミックスの表面にコーティングし、圧電体からの電気信号を計測することで構造体の破壊を予知する研究を行っていた。圧電体の電気信号を計測するために多数の電極とリード線が必要で計測システムは複雑であった。
「電気の代わりに光を発すれば、電極もリード線も必要なく破壊予知が簡単になるのでは」と考えた徐教授は、力学的エネルギーを光エネルギーに直接変換する新材料「応力発光体」の開発を決意する。同プロジェクトとは別の研究のため、休日を利用して自費で研究を行い、1999年、徐教授は世界で初めてわずかな力で繰り返し発光する現象「応力発光」を発見した。当時、徐教授は佐賀大の学生と共に同研究にいそしんでいた。徐教授は、当時2人で初めて可視光を観測した感動を忘れられないと語る。電気、光、力学的エネルギーの多元変換が可能な「ハイパーマルチピエゾ体」の開発に本格的に取り組むこととなる。
徐教授は「人間と違って、建物は傷ができても教えてくれない。傷が小さな段階で気づくことができれば、メンテナンスにかかるコストも抑えられる」と語る。
現在は、応力発光材料を塗布した橋と風車のドローンを用いた定期的な検査試験も行なっている。