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【書評】『涙にも国籍はあるのでしょうか』三浦英之




 「日本で暮らしていると、時の流れがちょっと速すぎると思うときがあるんだよ」


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 東日本大震災から13年弱が経過した今年2月に発行された書籍『涙にも国籍はあるのでしょうか』は、震災に関連して亡くなった外国人たちの生前の足取りを追い、彼らとともに生きた人々のその後を取材した新聞記者・三浦英之の著書である。東日本大震災における外国人犠牲者は41人とされる。しかし、行政制度上の問題や、日常的に日本名を用いている外国人が多いこともあり、この数字が正確であるかは疑問である。



 本書では著者の目線から、外国人犠牲者8人の関係者と、自身も震災で家族を失った1人の日本人木工職人の語りが記述される。いずれの証人たちの語りも悲痛である。しかし、外国人犠牲者たちが生きた時間は暗くなかった。そして、彼らが生きた意味は今なお失われていない。



 冒頭で引用したのは、震災によって命を落としたパキスタン人男性の友人による言葉だ。現在、多くの被災地では復興が進んだ。かつてがれきで覆われた土地は整備され、新たに開発が進められた地域もある。一度傷ついた土地が修復されて時間が経過すると、「記憶の風化」という問題は避けては通れない。行政が把握しきれず、メディアからの情報も少ないため、外国人犠牲者については「風化」以前に「無知」という問題もある。震災は過去のものという認識が広がり、震災を知らない子どもたちも増えた。そんな中、一般化された被災者という概念のみならず、個別具体の被災者の物語を知り、「風化」に歯止めをかける試みは以前にも増して求められている。本書は、我々が、外国人犠牲者たちが生きた物語を知る「証人」となる機会を与えてくれる。

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