総合学術博物館 歴史と生物掘り起こす 東北 化石研究の集積
本学総合学術博物館(理学部自然史標本館)は、化石標本を中心に幅広い分野の資料・標本を展示している。前号で掲載したコニュラリアの新種、イーハトーベンシスの研究など、本館で多くの化石研究に関わる永広昌之名誉教授に、本館や東北地方の地層の特徴、化石研究の魅力について話を聞いた。
標本館に展示されている嚢頭類のレプリカ |
本館は理学部の自然史標本館を前身とするため、大学の研究教育に関する資料を扱う方針が根底にある。年代ごとに分類された化石や生物、希少鉱物からは、進化の過程や地球環境の変遷など、広範な理学的知識を深められる。閉館した金属博物館資料の展示や縄文遺跡の遺物、宇宙開発関連の展示など本学の研究を代表する展示も揃う。
東北地方では全国的にも特徴的な地層が複数見られ、日本最古のエビや硬骨魚類など希少な化石が数多く発掘され続けている。岩手県~宮城県東部北上山地は、約5億年前(前期古生代)の古生代から約1億年前(後期中生代)にかけての地層が連続して存在する国内でもまれな地帯。シルル紀から白亜紀にかけて浅海として存在したため、長期間にわたり化石を含む地層の堆積が続いた。
南三陸地域は日本で唯一の魚竜化石や日本初の三畳紀化石などが発見され化石産地としても有名であり、日本各地から研究者や採集者が訪れる。
一方、仙台西部では竜の口層と呼ばれる新第三紀の地層が広がり、クジラやホタテなど海洋生物の化石が見つかっている。センダイヌメノハマグリなど仙台や宮城の地名が付いた化石も複数。同地域では縄文時代の遺跡も多く発掘されており、地質学と考古学の両面で豊かな発見の場として親しまれる。
化石の専門家と一口に言っても、生物の種類や年代など専門分野は多数分かれる。未開拓の分野も数多くあり、発見から30年越しに同定される標本や、捨てられる寸前で再発見された標本なども存在。永広博士はそのような分野の研究も行っており、「何億年もの時間に面積をかけた分だけ種がある」とその奥深さを話す。化石研究の魅力について「新たなものを見出してそこに価値を与えるというところが面白い」と語った。
東北の地層的な特異性や化石への知識を深めることで、歴史や生物をより鮮明に感じることができる。地域に根差した化石の展示を通じて、地球の歴史を身近に体感してみてはいかがだろうか。