【ネット限定】報道部夏合宿 in 飯坂温泉1「まるせい果樹園」
福島市飯坂町にあるまるせい果樹園。果物狩りや直営カフェ「杜のガーデン」のスイーツを求め県内外から多くの人が訪れている。果樹園の経営や栽培について、業務部長の佐藤ゆきえ(54)から話を聞いた。
佐藤さんは29歳の頃から農業を行っている。かつては直販や自営も行ったが、東日本大震災の際大きな転機が訪れた。観光農園を主軸としていた本園に人が訪れなくなった。義父母からも「福島ではなく違う土地でやり直したほうがいいのでは」と心配された。
しかし果樹園業に佐藤さんはやりがいを感じていた。「福島のこの土地や風土があるから私たちの作る果物ができる。神経質に構えても仕方がないし、ここで頑張らなければいけないなと思いました」と使命感を語る。
もちろん、果樹園業の継続は簡単ではなかった。収入は減り、果物狩りに来る観光客も激減したが、果物の収穫作業をしなければ果樹が腐ってしまうため人件費はかさんだ。3000万円の借金を背負うことにもなった。
そんなとき、持続可能な農業をする上での基準を定めたJGAPの存在を知った。「いい流れをくみ進めるチームワークがあるのが組織、ただばらばらの考えを持つ人が集まっているのが集団だと私は思っています。震災があった際は、この果樹園は集団だと思いました」。その後果樹園内での農業行程を明確化し、果樹園が「組織」となるようにした。現在はJGAPだけでなく国際基準のASIAGAPやGGAPも取得している。
同果樹園は果物栽培だけでなくカフェも経営している。きっかけは捨てられていた果物をどう売り上げにつなげられるか考えたことだ。
「オリジナル商品を作ってスーパーなどに加工品を卸しても、安いものに勝てない。生の果物を使うのが一番いいと思いました」と話す。2015年8月にパフェを提供する店をオープンした。現在パフェはインターネット上で評判となり、行列ができるほどの人気を博している。
丁寧に手をかけ、愛情をこめて育てることをこだわりにしている。「がつがつした気持ちでやると、いい果物はできないと思います」。今後については「果樹園での果物栽培の体制はしっかり保ちたい。それにプラスして新規事業などでこの地域をにぎやかにしたい」と語った。