【研究探訪】風洞装置見学 工学研究科・沼田大樹助教
https://ton-press.blogspot.com/2013/11/blog-post_7272.html?m=0
工学研究科の浅井圭介教授の紹介で、筆者は片平キャンパスにある、世界で唯一火星大気中での飛行環境を再現できる風洞装置の見学に訪れた。浅井研究室の沼田大樹助教が案内を務めてくださった。
風洞とは、人工的に空気の流れをつくり、現実の流れ場を再現、観測する装置ないし施設のことだ。装置内部に縮小模型を置き、それに風を当てることで模型周りの流体現象や圧力等を計測する。一般には、航空機や鉄道といった高速で移動する輸送機械や、風の影響を受けやすい高層建築物の設計時に使用される。
しかし、片平の風洞装置は一般的なそれとは異なる。火星に飛行機を飛ばす、という前人未到のプロジェクトのために製作された特別製だ。
火星は地球と比べ、重力は三分の一、気圧は百分の一しかない。気圧が低い中で従来の飛行機を飛ばそうとしても、十分な揚力を得られない。これまでの飛行機設計の常識が通用しないのだ。そのため特殊な構造を持つ機体が必要になり、この風洞装置の出番である。試験機の翼の模型を装置内部に固定し、翼がどれだけの揚力を生み出すことができるのか、その原因となっている現象はどのようなものなのかを調べる。計測には圧力を感知するセンサーの役割を持つ、感圧塗料というものを使用する。火星の大気状態を再現するため、風洞装置を真空チャンバー(内部を真空にするための容器)の中に入れる必要がある。一旦内部を真空にしてから二酸化炭素を充填する。これは火星の大気の95%が二酸化炭素であるためだ。
だがそもそも、火星に飛行機を飛ばすメリットはどこにあるのだろうか。
従来の惑星探査方法には、地表に探査ローバーを着陸させるものと、宇宙空間から撮影を試みるものがある。前者は広範囲の撮影ができず、逆に後者は地表面の詳細な探査ができない。そこで二者のデメリットを補いつつ、二者のメリットを最大限に生かすために考案されたのが火星飛行機というわけだ。最大の利点はローバーが入れない渓谷等起伏の激しい地形を撮影可能なことだ。これは地質学的にも大変貴重なサンプルとなる。
一方で制約もあるため、その制約の下で最大限の成果を得られるようなミッションを選定した。機体は極限までの軽量化が求められるため、動力源にはバッテリーを用いる。ロケット推進にすると、推進剤の運搬の安全性や容器の重量といった問題点があるためでもある。そのため稼働可能距離は数百キロぐらいであろうと沼田助教は言う。さらに火星飛行機は将来的には火星以外の大気のある惑星の探査にも応用が可能だという。
プロジェクトは2020年代前半の成功を目指している。そのころにはNASAも有人火星探査を計画しており、空と陸の両方から火星探査がより一層進展することを期待したい。
風洞とは、人工的に空気の流れをつくり、現実の流れ場を再現、観測する装置ないし施設のことだ。装置内部に縮小模型を置き、それに風を当てることで模型周りの流体現象や圧力等を計測する。一般には、航空機や鉄道といった高速で移動する輸送機械や、風の影響を受けやすい高層建築物の設計時に使用される。
しかし、片平の風洞装置は一般的なそれとは異なる。火星に飛行機を飛ばす、という前人未到のプロジェクトのために製作された特別製だ。
火星は地球と比べ、重力は三分の一、気圧は百分の一しかない。気圧が低い中で従来の飛行機を飛ばそうとしても、十分な揚力を得られない。これまでの飛行機設計の常識が通用しないのだ。そのため特殊な構造を持つ機体が必要になり、この風洞装置の出番である。試験機の翼の模型を装置内部に固定し、翼がどれだけの揚力を生み出すことができるのか、その原因となっている現象はどのようなものなのかを調べる。計測には圧力を感知するセンサーの役割を持つ、感圧塗料というものを使用する。火星の大気状態を再現するため、風洞装置を真空チャンバー(内部を真空にするための容器)の中に入れる必要がある。一旦内部を真空にしてから二酸化炭素を充填する。これは火星の大気の95%が二酸化炭素であるためだ。
だがそもそも、火星に飛行機を飛ばすメリットはどこにあるのだろうか。
従来の惑星探査方法には、地表に探査ローバーを着陸させるものと、宇宙空間から撮影を試みるものがある。前者は広範囲の撮影ができず、逆に後者は地表面の詳細な探査ができない。そこで二者のデメリットを補いつつ、二者のメリットを最大限に生かすために考案されたのが火星飛行機というわけだ。最大の利点はローバーが入れない渓谷等起伏の激しい地形を撮影可能なことだ。これは地質学的にも大変貴重なサンプルとなる。
一方で制約もあるため、その制約の下で最大限の成果を得られるようなミッションを選定した。機体は極限までの軽量化が求められるため、動力源にはバッテリーを用いる。ロケット推進にすると、推進剤の運搬の安全性や容器の重量といった問題点があるためでもある。そのため稼働可能距離は数百キロぐらいであろうと沼田助教は言う。さらに火星飛行機は将来的には火星以外の大気のある惑星の探査にも応用が可能だという。
プロジェクトは2020年代前半の成功を目指している。そのころにはNASAも有人火星探査を計画しており、空と陸の両方から火星探査がより一層進展することを期待したい。