【入学お祝い号2023・免許特集】 エッセイ 「補助ブレーキの毎日」
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私が自動車学校に通い始めたのは大学1年生の9月初め。残りの夏休みの間、1カ月ほどでの免許取得を目指していた。
自動車学校で恐る恐る手続きを済ませると、すぐに技能教習を受けられると言われた。これ幸いと受講を希望したが、当時の私には何の知識もない。いきなり運転をすることはないだろうと教習車に向かった。
一度運転を見せられた後、私は早くもハンドルを握っていた。道を歩くお年寄りとするだろうスピードで自動車学校の中に作られた道路をよろよろ走る。このとき既に自分の運転技術に不安を覚えていた。その不安は見事的中することになる。
自動車学校で運転する教習車には、教官が乗る助手席の足下に補助ブレーキがついている。卒業試験でこれを踏まれれば、一発で再試験が決定する代物だ。
赤信号を無視しかけ補助ブレーキ。一時停止をスルーして補助ブレーキ。アクセルとブレーキを踏み間違えて補助ブレーキ。私は実際に路上に出る19回の教習のうち、17回で補助ブレーキを踏まれた。
それでも不思議と卒業試験までたどり着いた。結果は合格。この運転技術の人が世に解き放たれていることに若干の恐怖を感じつつ、私は自動車学校を後にした。
その後、私が免許センターで無事に筆記での学科試験をパスし、念願の免許を取得したのは大学2年生の9月。自動車学校に通い始めて、ちょうど1年がたっていた。(木村舞乃)