【院進と結婚特集】研究活動と結婚・出産・子育て 両立どうする~資金、場所など一人では考えられない問題も~
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日本の法律では、18歳から結婚することができる。大学生も同様だ。自分では意識をしていなくても、周囲が結婚したり、出産したりといった知らせを聞くこともあるかもしれない。するかしないかは個人の自由だが、その権利は誰にでもあり、機会はいつ巡ってくるか分からない。
研究と、結婚生活や出産、子育てなどのライフプランとの両立について考える。学部を卒業して、若くても22歳。修士で24歳、博士ではそれ以上。結婚を自分事として捉えたとき、どのように感じるだろうか。(深田歩)
「負担感じる」半数
学業や研究活動とライフプランに対する考え方について、本紙は先月18日~22日、アンケート調査を実施した。将来研究職への就職を視野に入れる人のうち、半数以上が結婚やその後の子育てを重荷に感じると回答した。
全ての本学学生を対象に行ったアンケートで、90人から回答を得た。回答者は学部1年~学部5年、修士1年~2年で、所属による文理区分は文系が25人、理系が65人だった。
現時点での結婚への意欲を問う質問に対し、全体の4分の3以上が「必ず結婚したい」「どちらかと言えば結婚したい」と回答。そのうち8割以上が、具体的な結婚の年齢について30歳以下と回答した。
将来研究職に就くことを「考えている」、または「迷っている」と回答した人は57人で、全体の63%。そのうち32人が、将来働く上で結婚や出産、その後の子育てなどを重荷だと「とても感じる」「少し感じる」と回答し、約56%が研究職と結婚生活の両立に負担を感じている。さらに、研究職を視野に入れると回答した57人のうち、3分の1にあたる19人が、結婚や出産、子育てを理由に、大学院への進学、研究職に就くことを諦めたり、研究をやめたりする選択肢を考えることがあると回答した。
将来の進路や研究活動とライフプランに関して考えていることを尋ねた自由回答欄では、「出産と育児はきついと思うが、母親が研究職なので不可能ではないと思う」「研究と結婚どちらか一方のせいでもう片方を諦めなくてもいいようにしたい」と、研究と結婚、出産などの両立に対して前向きな意見があった。一方で、「キャリアと私生活が両立できるのか不安」「家業を継ぐときに結婚相手が一緒に地元に住んでくれるのか」「自分が女性であるという理由で、親が将来の職業として研究職ではなく公務員を勧めてくる」などの悩みもみられた。
ライフイベントに関連する相談は、本学キャリア支援センターにも寄せられている。自分一人では解決することができないパートナーのことや、結婚資金、家族のことなど内容はさまざまだ。就職先の育児支援状況のほか、パートナーの勤務先付近での就職に関する相談もあるという。
同センターではそのような悩みを抱える学生に対して個別相談を通して適宜情報を提供するとともに、本人が関係者と十分に話し合う機会を持てるよう助言を行っている。
両立阻む課題
結婚や出産は、研究と両立できるのか。本学男女共同参画推進センター長を務める、田中真美副理事は、工学系の研究者としてキャリアを歩んできた自身の人生に触れ、「研究の継続にはパートナーの理解が必要」と振り返る。
結婚では、同居のために女性が男性の元へ移ることがよくあるが、「研究が面白くなっていた私には、東北大学を離れるという選択肢はなかった」。すでに大学という居場所があり、違う場所で研究を行うということは考えたこともなかった。「無事結婚し、子どもも持つことができたのは、夫の理解があったから」。夫は富山県に住んでおり、互いに研究活動を継続している。
出産を経て研究活動に復帰すると、子育てとの両立に苦労した。「元々のキャパシティーが100だった状態から、育児と研究に100ずつ取り組もうとしていた。上手くいかなくて、初めは本当にいらいらした」。夫が支えてくれたことや、学内の保育園を利用したことで、肩の力を抜くことができた。
本学の女性研究者支援に率先して取り組み、昨年11月には「輝く女性研究者活躍推進賞」を受賞した大隅典子副学長・(広報・ダイバーシティ担当)は、研究者の出産を阻む理由に経済的な問題を挙げる。現在の出産に関する助成金は、かかった費用を申請すると一部が補填されるという仕組み。「クレジットカードを持っていない人や、まとまったお金をすぐに出せない人もいる。事前に手元にお金があるほうが安心して出産に臨めるのでは」と現行の制度への疑問を述べる。子育てに際してさらに費用が必要な現状にも言及し、出産だけではなくその後も合わせて支援していく必要性を訴えた。
2022年現在、日本の平均初婚年齢は30歳前後。就職や進学が目前の問題として語られがちだが、結婚も遠い話ではない。自らの望む人生を実現するため、学生の考えるべきテーマは多い。