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【研究成果】コロナ治療薬の副作用 仕組み解明 症状改善に期待

 本学加齢医学研究所の小川亜希子助教、魏范研教授らの研究グループは5月12日、COVID-19治療薬「レムデシビル」の副作用の仕組みを解明したと発表した。受容体経路の抑制による副作用改善が期待される。



 レムデシビルは日本を含む約50カ国で承認された、新型コロナの治療薬の一つ。この薬は低頻度ではあるものの、心機能への副作用が確認されていた。報告された症状は、脈が遅くなる洞性徐脈や低血圧、不整脈発生の危険性があるQT時間の延長など。本研究ではその副作用の要因が、心筋細胞の受容体の活性化にあることが発見された。





 レムデシビルが活性化するのは、心筋細胞に発現するウロテンシン受容体。これは心血管収縮や神経伝達に関わっており、活性化されることで心機能に影響が生じる。


 

 核酸の一種であるアデノシンによって受容体が活性化されることは古くから明らかになっていた。本学薬学研究科・井上飛鳥教授が開発した手法を用い、約400種類の受容体に対してレムデシビルの活性化作用があるか否かを網羅的に調べた。その結果新たに、核酸アナログ製剤であるレムデシビルに、受容体を活性化する作用があると判明した。さらにレムデシビル以外の核酸アナログ製剤には受容体の活性化能はなく、レムデシビルのみに見られる作用だった。



 レムデシビルによる活性化は、ヌクレオシド基とMcGuigan基がウロテンシン受容体と相互作用することで引き起こされるもの。McGuigan基は薬品の効果を最大化、副作用を最小化するために付与される官能基の一つ。



 副作用の改善方法は、活性化されるウロテンシン受容体の受容体経路を抑制するというもの。ウロテンシン受容体拮抗剤を用いることで副作用を抑える。



 今回研究の対象となった副作用の発生頻度はかなり低く、臨床研究に進むのが難しいため、現状レムデシビルの副作用に対する製薬の予定はない。今回の発見が副作用の少ない今後の医薬品の創薬技術に生かされることが期待される。



 本研究は九州大学大学院薬学研究院、国立医薬品食品衛生研究所との共同研究によって行われた。本学の研究チームには医学部の学生も含まれている。



 新型コロナウイルスの流行、それに対するワクチン開発に伴ってその重要性が増す核酸医薬。今後もさらなる発展が期待される。

研究成果 5422294465206625911
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