【研究成果】CLTモデル実証棟 ~グッドデザイン賞受賞~
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本学青葉山東キャンパスのCLTモデル実証棟が10月25日、2018年度グッドデザイン賞を受賞した。この受賞は、新しい建材であるCLTを用いた建築を行う際の材料加工・構造や、CLTを使う上での空間の利用可能性を可視化したことが評価されたものだ。CLTモデル実証棟の意匠設計に携わった本学工学研究科の都市・建築学専攻の藤山真美子助教に話を伺った。
CLTとは、Cross Laminated Timberの略称であり、細長い木の板を水平方向に並べて一つの層を作り、層同士の木の繊維の方向が直交するように層を積み重ねて接着した厚型の木製建築材だ。欧米諸国では日本と比べてこの建築材が積極的に利用され、主に中層建築物の共同住宅やホテルなどに採用されている。CLTは、寸法安定性が高く、さらに厚みがあることから、断熱性・遮音性・耐火性に優れている。また、施工性の良さや鉄筋コンクリート造(以下RC造)と比較した際の軽量性など多くの利点があり、これからの建築材料として大きな可能性を持つという。
このCLTモデル実証棟は、日本では発展途上にあるCLTの加工・施工方法や、CLT材の持つ雰囲気を、建設業者を中心に木質建築に関わる事業者がじかに見学できる場所として建てられた。そのためCLT構造材に内装を施さず建材の雰囲気をあらわにし、また他の建築材とCLTとの接合部を露出させるなど、CLTの使用法を展示し理解を促す意図が込められた設計となっている。また、日本は森林大国でありながらも、木材需要の低迷から利用されない木が多く、森林の高齢化が進んでいることにも注目しており、CLT建築による木材消費がその需要を高めることにも期待しているという。
建築構造としてCLTモデル実証棟は土台のRC造の上にCLTを組み込んだ一つのボックスのような形になっている。このボックス内は高さ5メートル、面積90平方メートルほどの広い空間。空間の大きさゆえに木が持つ独特のぬくもりが感じられる。さらには、空間の形状を活かした換気、空調、反響などを考慮した音環境計画も行なっている。多種多様に要求される室内環境性能を統合的にデザインするため、反響音の軽減を考慮した壁面や天井の有孔ボードの制作にデジタルファブリケーション(レーザーカッター)を取り入れる試みを行っている。一般的には音楽ホール等でも吸音面を構築するために、均等に穴の空いた汎用型のボード材を用いる。今回の建築においては、藤山助教が施工現場と連携して壁面や天井に必要とされる必要有効開口率の計算を行い、自ら学内の施設(創造工学センター)で加工を行うことで、ここにしかない有孔ボードのデザインが可能になった。
藤山助教は、現在の日本におけるCLT建築が、すでに普及している欧米に比べ、これから開発が進む分野であることを指摘。「今回、本学にCLT建築の先進的なモデル施設を整備する機会をいただき、さまざまな情報発信ができる環境が完成した。そのことによって今後公共・民間のプロジェクトにおいて多様なデザイン提案が実現されることが期待できるだろう」と展望を語った。
CLTモデル実証棟は講義、研究室ゼミ、ワークショップなどに利用されており、利用の申し込みがあれば誰でも利用可能だ。地下鉄東西線青葉山駅から徒歩5分の位置にあるので、日々の生活の中で気分を変えたいときに利用してはいかがだろうか。