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【研究成果】核融合プラズマ発電 性能悪化の原因を解明

 工学研究科、電子工学専攻の金子俊郎教授にお話を伺った。

―今回の研究成果について教えてください

 核融合反応には1億℃の高温と高密度のプラズマ、そしてそのプラズマを真空容器に閉じ込める優れた保持機能をもつ装置が必要となります。しかしプラズマを閉じ込めようとすると、温度や密度の揺らぎである低周波揺動と高周波揺動が発生し、プラズマの閉じ込め性能を悪化させていました。 



 従来は主に低周波の揺らぎが、閉じ込め性能を悪化させる直接の原因とされ、別々に研究されていました。そこで私たちは能動的に高周波の揺らぎを作り出し、高周波揺動が低周波揺動を引き起こす原因であることを発見しました。つまり高周波揺動を抑えることができれば、最終的にプラズマの閉じ込め性能が向上するのではないかと期待されます。

 その対策の一つとして、電場と磁場の力で電子、すなわちプラズマ自体を回転させる方法が有力視されています。

―そもそもプラズマとは

 物質の三態、固体・液体・気体に次ぐ第四の状態がプラズマです。気体を超高温に熱すると、原子が原子核と電子に分かれ、プラズマになります。蛍光灯の中やろうそくの火もプラズマの一種です。

 プラズマは多方面での活躍が期待されています。医療現場では傷の治癒に、環境面では汚染水の浄化などが挙げられます。

 私たちはこのプラズマを未来の新たなエネルギー源とする、核融合発電の研究に取り組んでいます。原子力発電が核分裂反応を軸にしているのに対し、核融合反応は原子と原子を高速で衝突させ、新たな原子の発生時に余分に放出されるエネルギーを電力に変換します。身近に核融合反応を起こしているものに太陽があり、この研究は地球上に人工太陽を創るものともいえます。

―核融合発電の将来性についてどうお考えでしょうか

 現代の主要な発電方法である火力発電や原子力発電の原料となる石油やウランが、このまま使い続けると残り100年分もないことは広く知られていると思います。一方で核融合発電には重水素と三重水素を用います。重水素は海水中に含まれるため資源に困ることはありません。三重水素は自然界にほとんど存在せず、かつ放射性物質ですので、いかに三重水素を人工的に作り、安全に運用するかが課題となります。それがクリアできれば、国ごとの資源格差のないエネルギー源となるでしょう。

 また原子力発電の場合、一度条件を満たすと核分裂反応が連鎖し暴走してしまいます。制御棒を使うことで反応の調節をしているのですが、少しのミスが大事故を招いてしまいます。核融合は逆に、条件を満たし続けないと、反応が起こりません。そのため連鎖反応による暴走がなく危険性がずっと少ないのです。

―実用化はいつごろになるのでしょうか
 
 今はまだ実験機の段階です。今回の研究成果等を基に実証機などの建設、実験が進展することを期待します。実際に家庭の電力を賄えるようになるには、50年ほどはかかると思います。まさに次世代を担うエネルギーなのです。
研究成果 2308960913763143147
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