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【書評】『禅とジブリ』 鈴木敏夫 淡交社

 「風の谷のナウシカ」や「となりのトトロ」など、数々の名作アニメーションを世に送り出してきたスタジオジブリ。そのジブリを長年にわたりプロデューサーとしてまとめてきたのが、本書の著者である鈴木敏夫さんだ。本書は、鈴木さんと3人の禅僧が5回にわたって行った対談をまとめたものである。



 本書の大きなテーマは「この生きづらい世の中をどう生きるか?」ということ。突然だが皆さんは、普段の生活の中で「生きづらさ」を感じることはないだろうか。人間関係で悩んだり、過去の苦い経験を引きずったり、周囲からの見られ方を気にしなければいけなかったり……。改めてよく考えてみれば、「生きづらさ」を感じることは意外と多いのではないだろうか。現代という時代に生きる我々にとって、規則やしがらみから抜け出し、自由に生きるということは困難であるのかもしれない。

 本書は、そんな世の中を「やわらかく、やさしく、強く」生きるためのヒントを提示してくれる。「どんなつらいこと、楽しいこともその日一日だと思えば耐えられるし、浮かれることはない」、「自分が本来無一物であると認識すると悩みも自分の影法師でしかない」など、3人の禅僧が説く仏教の教えはシンプルでありながら、力強く心に響く。彼らの言葉はどれも我々の心をすっと軽くしてくれる。鈴木さんと禅僧が対談の中で「よい生き方」を導き出していくにつれ、心の中で複雑に絡んでいた糸がほどけていく……そんな感覚を覚えた。

 対談は鈴木さんと禅僧がとにかく自由にしゃべることで進んでいく。非常にテンポよく進んでいくので、どんどん読み進めてしまった。

 本書を読むにあたっては、仏教に関する難しい知識や、ジブリ作品を知っている必要もない(もちろん、知っていればより楽しめるが)ので、ぜひ手に取ってみてほしい。自分と、そして周囲との上手な向き合い方に気づくきっかけになれば幸いだ。
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