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【研究成果】シルク基材の電極 開発 -医療分野での活用を目指す―

 工学研究科の鳥光慶一教授は、シルクを基材とした肌に優しい電極の開発に成功した。そして、これを応用した医療機器の開発を図ることで地域の活性化と発展を目指すベンチャー企業を設立した。




 電極とは医学的に、体内に流れる電流の計測や、治療で患者の体内に電流を流すのに用いる器具のことを指す。通常は金属板やプラスティックなどの高分子材などが電極として利用されるが、金属アレルギーを持つ患者に対しては装着できない、蒸れて掻痒感が伴うなどの問題がある。

 今回開発されたシルク電極はシルク素材と電気を通す導電性高分子を組み合わせたもの。シルクは天然繊維であるため、従来の電極と比べ吸水性が高く肌触りが良い。それに加えてシルク素材は長時間着用していても違和感がなく、体の動きに追従できることにより装着感のない生体測定・刺激が可能となる。

 シルク電極は健康スポーツ分野や医療・ヘルスケア分野、リハビリなど、様々な分野での活用が期待されている。スポーツ用のインナーに入れ込むことで電流を流し筋肉を刺激して動かし、心拍や皮膚血流量を計測するのはその例だ。

 さらに、シルク電極による産業展開は養蚕業や染色業にまで及ぶ。日本の絹は外国の絹と比べて肌触り・品質が非常に良く、肌に直接触れることを必要とするシルク電極には最適だ。またシルク素材への染色の方法に関しても、科学的見地から伝統的な染色方法が最も理想的だと判明した。現在養蚕業と染色業は斜陽化を極めている。鳥光教授はこれらの伝統的技術について「産業は一度廃れると再興するのは難しい。シルク電極で伝統技術との融合を図り、繊維産業を盛り上げたい」と意気込む。

 シルク電極の最終目標は医療分野での活用だ。「パーキンソン病の治療に使えないかと考えている」と鳥光教授は語る。パーキンソン病の典型的な症状として手足の震えや姿勢の維持が困難になることが挙げられる。外科療法では脳内に金属電極を埋め込み、電気刺激を与えることで手足をコントロールする。しかしこの治療では脳に炎症が生じてしまい、数年後には刺激を送れなくなり、最終的には脳に穴が開いてしまうという課題があった。シルク電極では体内に電極を埋め込む必要が無いため、身体を傷つけることなく治療を行うことができる。

 12月9日に開催された本学の研究成果を紹介する「東北大学イノベーションフェア」での反響は大きく、国内・国外を問わず多くの企業から共同開発や投資をしたいとの声があった。鳥光教授は今後の展望について「色々な分野にわたって活用してほしい」と話した。
研究成果 2797262105654631407
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