【連載】オフィスアワー ②男子大学が無いのはなぜか
身近な疑問を先生方に尋ねに行く企画「オフィスアワー」。ふと抱くものの理由が分からない―そんな疑問の答えを報道部員が専門家に聞く。
日本には女子大学がいくつか存在するが、男子大学はない。この疑問の答えを戸村理准教授に聞いた。
(聞き手は宮坂航一)
戸村理准教授 |
―日本で、大学ができた頃の男女比はどれくらいでしたか
戦前の「王道」の進学ルートは、旧制高校から帝国大学というルートでした。この旧制高校には中学校を経て進学しますが、その中学校は男子のみの中等教育機関でした。そのため大学には原則、男子しかいませんでした。
―本学の女性入学の許可はどのような経緯でしたか
これは、本学の初代総長である澤柳政太郎の役割が大きいです。澤柳は文部次官を務めた経験を持ち、国内はもちろん、欧米先進国の教育事情にも精通していました。当時の法令では、帝国大学の女子の入学が禁止されてはいなかったことに、彼は注目したのです。
さらに、本学の入学基準は他の大学と異なっていました。当時の大学入学者として一般的であった旧制高校と大学予科の卒業者の他に、中等教員免許の保有者および中学校卒業者を本学は入学の有資格者としていました。当時の本学は入学者確保に悩んでいたこともあり、3名の女子の入学を許可しました。
―男子大学が作られなかったのはなぜですか
戦前の日本では、女性の進学機会は閉じた状態でした。当時は大学自体が男子のための学校と考えられていたため、男子大学が作られるということはありませんでした。
―なぜ女子大学が生まれ、今も残り続けていますか
戦後、男女の教育機会の均等や相互尊重の促進のため、女子大学の創設や大学教育における共学制の方針が定められたからです。戦前においても、女子大学設立構想や共学化は幾度となく議論になりました。しかし実現したのは戦後になってからで、「女子教育刷新要綱」が閣議了解されたことで、日本で女子大学が生まれることとなりました。
女子大学はそれぞれ独自の建学の精神や教育理念を掲げており、日本の高等教育において重要な役割を担っています。そのため今もその存在が求められているのです。
―中学、高校で男女別学の学校が多くあるのには何か理由があるのでしょうか
中等教育での男女別学がアイデンティティの形成に寄与するといった研究成果などはよく耳にしますが、その効果については、今後も検討が重ねられていくと思います。こうした研究に精通していないので、個人的に知り得る範囲での回答になりますが、男女別学の研究については、さまざまな切り口があると思います。ただこの研究は自然科学と違い、対象が人なので、対象や条件を限定しつつ、多くのデータや知見を積み上げる必要があります。その意味では、研究は今後、大きく発展するのではないでしょうか。
とむら・おさむ
本学高度教養教育・学生支援機構准教授。同機構高等教育開発室所属。専門は教育学、教育社会学、高等教育論