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【受賞】尾崎彰宏教授 阿部次郎賞受賞 ~日本文化と世界との架け橋を~

 本学文学研究科の尾崎彰宏教授が、第33回阿部次郎文化賞を受賞した。同賞は1984年に創設され、哲学者の阿部次郎氏に関する研究や哲学・美術の研究で顕著な実績がある個人、団体を顕彰している。




 尾崎教授は阿部次郎氏の美学の視点から多年にわたり西洋美術史の研究を続けてきた。また、阿部次郎氏が構想した国際比較による日本文化研究を更に発展させるべく「日本学」という新領域の構築に尽力している。これらの業績が評価されたことが受賞の理由だ。尾崎教授に今回の受賞について話を伺った。

―受賞してのお気持ちは

 阿部次郎氏は本学法文学部美学講座の初代教授で、雲の上の人のような存在でした。また、阿部氏は反時代的な精神を持った人で、戦時中の学徒壮行会で「我々は文化を守り、諸君の帰還を待つ」と語ったことがあります。当時は禁句でしたから、周囲を戦慄させた出来事でした。時代に流されてはいけないということを学生に伝え続け、優れた業績を残した人の賞を受賞したことは大変光栄なことだと思います。

―先生の研究とは

 西洋美術史、美術理論を研究しています。美術は本来、社会構造、美術の市場、思想などが関わりあって成り立っています。しかし、従来の研究では美術それ自体にしか着目していませんでした。私は阿部氏が高く評価していた「個人」の概念を中心に据え、個々の画家や美術の受け手などがどのような美意識を持っているかに着目して研究を行ってきました。

―「日本学」とは

 現代社会の課題に焦点を当て、日本文化を役立てていこうとする学問が、「日本学」であると考えます。今まで日本人は、日本文化は独特なものであって他の文化圏に属する人には理解しえないだろうと考え、それ故日本文化には独自性があるとしてきました。しかし、それは実際には中身がないのにあると言っているようなもの。他の文化の中に生きる人に理解されてはじめて独自性があると言えるのです。これからは、日本文化とは何かを考え、その内容をアップデートしていく必要があります。独自のものを持った文化がつながっていくことが、現代の課題にアプローチするためには重要です。阿部氏の個人の内面を重視する美学や精神を受け継ぎ、日本文化と世界の架け橋を仙台発でつくっていきたいです。

―今後の研究の展望は

 まず、美術の観点で、各地域をどのように結びつけ、どのように「世界美術史」を構築していくか研究していこうと考えています。グローバル化で世界がつながった今、従来のようにヨーロッパ中心のものの見方をするのではなく、それぞれの「場」に立脚した見方をすることが重要になってきます。

 また、現在本学の文系4学部が共同で「日本学国際共同大学院」の設立を目指し取り組んでいます。理科系の学問と対比して文科系は役に立たないと言われることがあります。確かに即効性はないかもしれませんが、現代の課題に対処するための発想を育む基礎学として人文社会学は社会の役に立つと訴えていきたいと思います。
受賞 7657410545689570941
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