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【復興の今】河北新報「むすび塾」 ~「狭く深く」防災の輪広げる~

 「災害の犠牲を再び出さないこと。それは被災地新聞社が果たすべき役割、そして責務だ」。河北新報社防災・教育室の武田真一室長は語る。2011年3月11日に発生した東日本大震災で、宮城県内は甚大な被害を受け、犠牲者は1万2千人に上る。災害の備えへの情報提供と意識啓発に留まった従来の「広く浅く」の防災報道に対し、見直しが迫られた。




 震災半年後の8月に行われた防災報道に対する検証アンケートの結果が、この事実を浮き彫りにしたと当時報道部長だった武田室長は考える。防災記事が「役立った」との回答は3割弱。「これまでの報道の限界を突きつけられた」と振り返り、「従来の意識啓発に加え、防災に『狭く深く』働きかけていくことが必要」と数々の取り組みを模索する。

 武田室長が立ち上げた防災プロジェクトの一つが、巡回ワークショップ「むすび塾」。12年5月に東松島市大曲地区で初めて開催され、今年3月で65回目を迎えた。町内会や子ども会、職場など小さな集まりを対象に、専門家と一緒に震災を振り返り、防災対策の検討や備えへの実践を促すことが狙い。ワークショップの内容は、震災月命日の毎月11日に特集紙面「防災・減災のページ」の中で取り上げ、読者との共有を図る。

 「新聞社は人と人とを繋ぎ、社会をコーディネートできる」と武田室長。「地元新聞社が持つ結節点としての機能を最大に発揮したい」。「むすび塾」の名前には、人と人、人と地域、地域と地域を結び、防災の輪を広げていくとの思いを込めた。専門家の情報に加え、当時の震災の記憶を参加者同士で共有し直すことで、防災意識を高め合う。

 地震災害の被災が想定される地域と東北の被災地とを「むすび塾」で結び、全国に東日本大震災の教訓を伝える取り組みも進めている。14年6月、北海道新聞と「むすび塾」を共催したことを皮切りに、宮崎日日新聞や高知新聞、MBS毎日放送など地方紙や地方メディアとの共催を年3回のペースで実施。日本各地のメディアとの防災報道の共有が、災害による犠牲を食い止め、繰り返さない「役立つ報道」に繋がると期待される。

 「むすび塾」の企画・運営は、去年4月に新設された防災・教育室が担う。防災・減災プロジェクトの担当者と既設の教育プロジェクト事務局とが統合されて誕生した。「防災」を名称に掲げた部局は全国の新聞社の中では極めて異例だが、防災啓発と震災伝承を専任とし、被災地から発信する責務を果たしていく姿勢を示した。

 「新聞社の強みを使って何ができるか。今後は若い人たちがあらためて震災と向き合う機会を作っていく」。通年講座「311伝える/備える次世代塾」を企画し、大学生ら若者対象に震災と向き合い、教訓を考えてもらう新たな防災プロジェクトを今月からスタートさせる。震災から6年がたった被災地域に根差し、日本中に防災の輪を広げるべく武田室長の試行錯誤は続く。
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