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【研究成果】本学教授 心不全治療研究2件発表 ~発症・予後・治療反応 より簡単に予測~

 10月中旬、本学大学院医学系研究科循環器内科学分野の安田聡教授が、心不全治療に関する研究成果を2本発表した。経時的な胸部レントゲン写真の分析や、一酸化窒素(NO)吸入負荷試験によって心不全の発症や予後、治療反応を予測できることを示した。


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 一つ目の研究では、胸部レントゲン写真の経時変化から心不全の発症を予測できる可能性を明らかにした。レントゲン写真上では心臓の輪郭が実際よりも大きく写るため、従来はレントゲン写真による心胸比(注1)と心機能にはあまり関連がないとされていた。



心不全治療の研究成果を発表した
安田聡教授(本人提供)


 本研究ではステージB(器質的心疾患はあるが心不全未発症の状態)の患者5126人分のレントゲン写真を解析し、データ登録時の心胸比が53%よりも大きく、年間0.5%ずつ上昇する場合に心不全を発症する危険性が高いと明らかにした。



 これにより、精密だが時間がかかったり検査環境が限られたりする超音波検査よりも、比較的容易に検査ができるようになると期待される。



 続いて発表した研究結果では、NO吸入負荷試験によって心不全の予後と治療反応を予測できると示した。



 血管内皮から分泌されるNOは人間の身体において重要な生理活性物質だ。不足すると血管系の病気の発症や進行につながると考えられており、近年はNOを分泌させる刺激薬が開発されるなど関心が高まっている。



 NO吸入負荷試験は未知な部分が多く、臨床の方針となる「ガイドライン」上では強く推奨されていなかったため、安田教授ら研究グループは過去のNO吸入負荷試験のデータ69例を元に、後ろ向きに研究を進めた。







 研究の結果、肺動脈楔入圧(注2)が上昇した症例では心不全の再入院率が高いことが判明した。肺動脈楔入圧の変化率を詳細に分析することで、予後や治療反応性も予測できると分かった。


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 心不全は、心臓が悪いために息切れやむくみが起こり、徐々に生命をむしばんでいく病気である。循環器の領域では世界的に多く見られる疾患であり、患者数は日本国内だけでも100万を超えると言われている。診断法や新薬の反応性に関する研究の需要が高まる中、今回新たに二つの成果を得ることができた。安田教授は「患者さん、ひいては国民、市民の方々に還元できる、まさにタイムリーな知見を得ることができた」と語る。



 二つの研究は共に膨大な患者データとその分析が必要で、本学が数十年にわたって進めている「東北慢性心不全研究登録研究(通称:CHART研究)」を基に、共同研究企業の持つ解析技術などを駆使した。データを丹念にとってデータベース化してきたことが今回の二つの研究に結び付いたと安田教授は考える。



 また、日々の診療の中でもデータは蓄積されていく。安田教授は「日々の臨床での患者さんからのデータを分析して、その成果が患者さんの元に返ってきたら」とデータサイエンスが生む循環に期待を寄せた。



(注1)心胸比
肺の幅に対する心臓の幅の割合


(注2)肺動脈楔入圧
バルーンカテーテルを右心房から肺動脈へ挿入し、バルーンを膨らませて血流を止めた際にカテーテルの先端にかかる圧のこと

研究成果 3166377390345285169
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