仙台屈指の心霊スポット 八木山橋の魅力に迫る
皆さんは、仙台屈指の心霊スポット、八木山橋について知っているだろうか。漫画「呪術廻戦」にも描かれたため、その名を耳にしたことがある人も多いかもしれない。
少し肌寒い秋風が夏の終わりを教えてくれる9月半ば。我々報道部も、八木山橋での肝試しに挑戦した。
初めに、肝試しに同行してくれる勇敢な部員を募ったのだが、一向に集まらない。見かねた編集長が参加してくれることになり、何とか企画倒れは免れた。正直、私も八木山橋について調べる中で怖くなり、ネタを変えようかと思っていたのだ。報道部員は臆病者ばかりだ。しかし、忙しい中肝試しに付き合ってくれる編集長を裏切るわけにはいかない。1割の好奇心と9割の義務感が恐怖に勝った私は、八木山橋行きを決意した。
本学から八木山橋へ向かう方法は二つある。一つは、川内南キャンパスから市道仙台城跡線を進む方法。もう一つは、地下鉄で八木山動物公園駅まで行き、遊園地を越えて到達する方法。後者の方が楽ではあるが、地下鉄という文明の利器に頼る選択肢は当然なく、キャンパスから自転車で向かうことにした。今考えれば自転車も文明の産物なのだが、この時は忘れていた。
肝試しの決行日は、どんよりとしたねずみ色の雲が頭の上にのしかかってくるような空模様だった。周辺でクマの目撃情報があったため、訪問時間を早め、16時とした。木々がうっそうと茂り日中でも薄暗い山道を、自転車で駆けていく。最後のカーブを曲がると、何の前触れもなく突如目の前に八木山橋が現れた。本当に突然だったので、私も編集長も感慨が薄かったように思う。
自転車を橋の手前に止め、八木山橋へ歩を進める。橋の縁には、人の背丈より高い欄干がそびえていた。当初はもっと低かったそうだが、八木山橋から飛び降りる人があまりに多く、飛び降り防止のために年々高くなっていったそうだ。欄干の上に設置されているねずみ返しも、自殺者の多さを物語っている。確かに薄暗く不気味な雰囲気だ。しかしその一方で、想像より怖さはない。車通りがあるからだろうか。見ることも感じることもできない幽霊より、欄干に巣くうクモの方がよっぽど不気味に感じた。
写真を撮り終え帰ろうとしたとき、編集長が橋の下を眺めていることに気が付いた。一瞬、何かいたのかとおびえたが、編集長が物理学科だったと思いだし編集長に近づいた。物理学生が幽霊を信じないということを、私は知っている。目線の先をなぞると、そこには岸壁に現れた地層があった。八木山橋の真下を流れる竜の口沢。その竜の口沢が削ってできたのが竜の口渓谷で、高さは70メートルにもなる。紅葉の名所として知られているが、化石の採集地点としても有名だ。肝試しに来たのに、自然が作り上げた景観に感嘆している。そんな矛盾に、ひそかにほっとしている自分もいた。さあ、今度こそ帰ろう。二人、八木山橋を後にした。後ろ髪を引かれる思いがしたのはきっと、楽しかったからに違いない。 (平山遼)