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【インタビュー】災害研 被災地で活動 現地調査や支援 歩む

能登町役場に掲げられた、能登高校書道部による横断幕
(國井准教授提供)


 今年の1月1日、石川県能登半島で最大震度7の揺れを観測する地震が発生した。これを受けて、本学災害科学国際研究所(以下、災害研)に所属する研究者たちが、現地調査や被災者らの支援活動を行っている。災害研のサッパシー・アナワット准教授と、國井泰人准教授に話を聞いた。(小滝真悠)



 災害研には災害評価・低減研究部門や災害医学研究部門、防災実践推進部門など幅広い分野の研究者が所属している。元日の地震が発生した際には、その日のうちに青葉山の災害研への招集がかかり情報収集がなされた。


 

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富山県で津波の最大到達地点を調査する様子
(アナワット准教授提供)


 津波工学が専門のアナワット准教授は、1月29日から2日間にわたって、富山県と新潟県で発生した津波を調査した。津波は通常、地震発生後15~20分ほどで到達するが、今回、富山県には数分で津波が来ていた。調査の結果、地震による海底地すべりが原因だと判明し、地すべりが発生した場所の検証が進められた。



 2007年に能登半島で発生した地震による津波も、先に到達したのは富山県沖だった。地形的に海底地すべりが起きやすい場所だとアナワット准教授は指摘する。



 津波関連では、津波が運んできた「津波堆積物」の調査を行う研究者もいる。何千年も前から津波は発生しており、その影響で陸に海底起源の土砂などが堆積することがある。地層ごとの年代を測定することで、津波の周期や、津波の大きさと堆積の規模との関係性を調べることができる。



 アナワット准教授は、東日本大震災以降初めて「大津波警報」が出されたことも重要な点だと話す。能登半島で調査を行ったチームと今後も研究を進めていく予定だ。


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被災地での國井准教授の活動(同氏提供)

 災害精神医学が専門の一つである國井准教授は、2月1日から7日まで能登半島で被災者のメンタルヘルス支援を行った。國井准教授は宮城県のDPAT(=注=災害派遣精神医療チーム:Disaster Psychiatric Assistance Team)統括者として先遣隊の調整を担い、自身も第三陣として現地に向かった。



 國井准教授らのチームは富山県から石川県に入り、七尾市の活動拠点本部で情報共有をした後、特に被害の大きい珠洲市に向かうことになった。珠洲指揮所ではDMAT(災害派遣医療チーム:Disaster Medical Assistance Team)や日本赤十字社などのチームと毎朝会議をして、支援の要請をもとに福祉避難所や小中学校の避難所でそれぞれ活動を行った。



 珠洲市は高齢化率が50%を超えているものの、高齢者らの二次避難が進んでいないことが課題である。この原因として、「金沢市など県南部との地理的、心理的距離の大きさがあるのでは」と國井准教授は話す。



 厳しい避難生活が続いているが、能登町役場には能登高校書道部による横断幕が掲げられ、被災者たちの励みや癒しになっていたという。



 國井准教授は現在、メディア関係者のメンタルヘルスにも関心を寄せる。ウクライナやガザなど戦地での取材も含め、記者たちの代理受傷や共感性疲労が世界的に注目されてきている。同氏は大手メディアとの共同研究を検討している。



(注)DPAT 災害時に精神医療の面から被災者を支援する、各都道府県によって組織される専門的なチームのこと。東日本大震災後に結成された。


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