【文学研究科】原塑教授 哲学は科学の源 あらゆる学問の土台に
はら・さく
本学文学部・大学院文学研究科総合人間学専攻哲学倫理学講座に所属(写真は本人提供)
これまでトロッコ問題などの問いを通して哲学に触れたことのある高校生でも、哲学がどのような分野と関係があるかを考えたことのある人は少ないだろう。哲学と関連のある分野について本学文学部・大学院文学研究科の原塑教授に話を聞いた。(聞き手は田中日翔)
―研究内容は
心の哲学です。これは、20世紀以来、英米圏を中心として展開された分析哲学の一分野です。例えば、目の前に見えるリンゴの赤さを科学的に説明することは本当に可能なのか、といった意識に関する研究を行っています。また、科学コミュニケーションも研究しています。これは、科学情報を社会に伝えるときの留意点の研究です。
―近年、AI(人工知能)と哲学の学際的な分野への注目が高まる中、AIの研究開発についてどのように考えているか
AIについては、特に倫理面から研究を行っています。これまでは、自然物としての脳を研究対象としていたので、研究分野を拡張する形になりました。人間に近い振る舞いをするAIの作動を見ていくことで人間の心の理解が深まる側面があると思います。その意味でAIは興味深いです。
理想的なAIは、高い情報処理能力と高度な道徳性を併せ持ちます。現実の政治は、偏見や自己利益の追求といった人間の愚かさに翻弄されていますので、正しい道徳判断を下すことができるAIを開発できれば、それに政治的判断を任せた方がよいでしょう。
一方、現実に目を向けると、AIは社会に利益をもたらしているように見えますが、人類の知恵や情報を一部の私企業に集約する富の収奪システムの道具となっています。そのため、現実のAIが果たしている役割は劣悪です。
―大学で哲学を学ぶ意義とは
大学の中で哲学は独特な地位を占めています。他の学問分野、例えば、日本の歴史を対象とする分野は日本史と呼ばれ、物理現象を対象とする分野は物理学と呼ばれますが、哲学の場合、対象が定まっていないのです。
哲学とは、社会や自然の在り方について探求した、古代ギリシャからの一貫した知的営みの蓄積です。その蓄積が洗練され、科学が生まれてきました。その意味で、哲学は科学の源であり、現代的な科学の方法論や実験装置を使わずとも、社会や自然、人間について考える資源となる知の宝庫だと思います。
そのため、哲学を勉強しておくと自然科学や人文社会科学の知識を理解するときの基礎となり、さまざまな事柄を学ぶとき、既知の哲学の考え方に立ち返って考えることができます。
―哲学の魅力とは
哲学は不思議とはまりやすい学問で、パズルを解くことに近い部分があります。哲学者は難解で含蓄のある言葉を使います。その難解な言葉を解きほぐし理解すると、哲学者が持って回った言い方をする理由を理解できるようになります。こうして理解を深めることが与える「楽しい」という印象が哲学の魅力です。
―本学で研究することの良さは
本学は総合大学であり、仙台市内の狭い範囲に多種多様な分野を研究している人が集まっています。その人たちと話すことを通して、自分が知っていることの狭さを自覚し、さまざまな考え方で世界を見ている同世代の人たちがいることを知ることができます。
