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【研究成果】最古の生命を発見

 グリーンランドのイスア地域に存在する岩石から、最古の生命の痕跡が発見された。本学とコペンハーゲン大学の共同研究グループがこの痕跡について調査を行い、38億年前の地球に生命が存在したことを裏付けた。これにより生命の起源を巡る議論に新たな展開が生まれ、研究の更なる進展が期待される。 



 生命が存在した証拠として最も確実で分かりやすいものは化石だ。しかし化石はプレートの動きにより押しつぶされたり、高温・高圧環境に耐えきれず消失したりするため、古いものほど発見しにくい。そこで今回、代わりに利用されたのが炭素の同位体組成。今の生物も昔の生物も体を構成する炭素の同位体(*)組成は同じだ。また炭素は高温・高圧環境に晒されても消失しない。つまり昔の地層中の岩石に含まれる炭素の同位体組成を調べ、それが現代の生物と同じであれば、その炭素は当時の生命の痕跡だと証明される。

 「実はこの方法が用いられたのはこれが初めてでは無い」と本学理学研究科で研究グループの一員でもある掛川武教授は述べる。イスア地域に存在する古代の地層については以前から世界中で研究が進められており、今回と同じように生命の痕跡が発見されたという報告が1999年にもあった。しかしここには問題が残されていた。生物に特徴的な炭素の同位体組成に良く似た組成が、地面から湧き出す温泉に含まれる炭素でも成り立つ。検出された同位体比が生物由来のものか、温泉由来のものかを区別しなければならない。当時の報告ではこの部分が解明されていなかった。

 そこで研究グループではまず、炭素を含む岩石がなす地層が38億年前の海底だということを地質調査により示した。次に岩石にレーザーを当てることで炭素の微小領域分析を行い、炭素の同位体比を調べた。レーザーが用いられたのは今回が初めて。従来はフッ化水素に岩石を溶かし、炭素のみを取り出す化学的処理法が用いられていた。しかしこれでは局所的な分析が不可能だった。レーザーの利用によりこれが可能になり、細かい分析結果の取得に繋がった。また、これとは独立してレーザーラマン法と呼ばれる方法で炭素どうしの結合状態を調べた。その結果、これら全てのデータが以前の発表と比べてよりよく生物と一致することが確認された。さらに電子顕微鏡を用いた炭素の観察によって、炭素の並びに不規則性が見られた。この不規則性は生物が死んで炭化するときにできるものと一致しており、レーザーラマン法の結果と合わせて38億年前の海に生物が存在していたことを証拠づけた。

 今後は当時の生物の細かな形態を突き止め、生息環境を推測していくという。今回の発見はグリーンランド全体でもたった2か所目。掛川教授は「生命が存在したならば場所はここだけではないはず。もっと多くの場所で痕跡を発見したい」と語った。


(*)同位体……同じ元素で、互いに構成する物質のうち中性子の数が異なる原子どうしのこと。
研究成果 847961666150755968
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