読み込み中

【研究成果】露へ落下の隕石を調査 ~宇宙化学的解析で惑星の起源へ迫る~

 今年2月にロシアのチェリャビンスクの空中で大爆発を起こした隕石をご存知だろうか。本学大学院理学研究科地学専攻の中村智樹教授(写真左)とアン・インスー博士(写真右)が国際コンソーシアム(共同)研究に参画し、この隕石試料の同位体宇宙化学的解析を行った。



 今回教授らが行ったのはチェリャビンスク隕石を構成する元素の一つである酸素の同位体(*)比の解析だ。惑星の種類によって岩石に含まれる酸素同位体の比率は異なる。つまりこれを調べれば隕石がどの惑星、またはどの小惑星からやってきたのかを推測することができる。

 同位体測定の方法は次のようなものだ。まず隕石を五フッ化臭素でフッ化させて隕石から酸素を追い出す。次にこれをフライトチューブの中へイオン化した状態で入れて加速し、磁場をかける。イオン化した酸素はその質量、すなわちどの同位体であるかによってローレンツ力による軌道変化の大きさが異なり、したがってイオンの軌道も異なる。そこでそれぞれの軌道合わせて検出器を準備する。これによりどの同位体が1秒間にいくつ検出されるかを調べ、その岩石に含まれる複数の同位体の比率を調べ出す。

 この解析により分かったことは、チェリャビンスク隕石が以前世間で話題を呼んだ小惑星「イトカワ」の岩石に含まれる酸素の同位体比とほぼ同じであるということ。どちらも隕石の中でLL型コンドライト隕石と呼ばれる分類に属していた。このことからチェリャビンスク隕石は火星の向こう(地球から見て木星側)にある小惑星帯に存在する小惑星の中で、S型小惑星に分類される天体を起源とするものであると考えられている。

 また、チェリャビンスク隕石は地面に衝突する前に空中で大爆発を起こした。この理由は隕石が小惑星の一部であったとき、別の小惑星と衝突したからであることが研究により解明されている。衝突の影響で亀裂が生じてもろくなった隕石は大気圏に突入した際の衝撃で割れ、大気との摩擦を起こす面が広くなったことで温度が上昇し、爆発した。それを証明するのは小惑星同士の衝突でしか生じ得ない、隕石中のガラスでできた黒い脈。今後教授らは、このガラス部分に含まれる放射性同位体を調査し、チェリャビンスク隕石がいつ小惑星と衝突したのかを明らかにしていくという。

 小惑星や惑星は45億年前に宇宙のちりが集まって小さな天体となり、それがさらに衝突を繰り返すことでできあがった。その歴史を紐解こうとしても、天体内部が溶融し元素や同位体の均質化が進んだ地球では困難だ。一方小惑星帯には均質化の進んでいない小惑星が45億年前のままの姿で漂っている。小惑星帯から得られた岩石の研究を進めることは、我々の暮らす地球がどのようにできたかを解き明かす重要な足がかりとなる。

 今後も宇宙由来岩石の調査の進展から目が離せない。


(*)同位体…同一元素の原子で、構成粒子の一つである中性子の数が異なる原子どうしを、たがいに同位体という。
研究成果 7419525333265925056
ホーム item

報道部へ入部を希望する方へ

 報道部への入部は、多くの人に見られる文章を書いてみたい、メディアについて知りたい、多くの社会人の方と会ってみたい、楽しい仲間と巡り合いたい、どんな動機でも大丈夫です。ご連絡は、本ホームページやTwitterまでお寄せください。

Twitter

Random Posts