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【研究成果】地球ニュートリノ到来方向観測技術 応用可能性を実証

 本学ニュートリノ科学研究センターの渡辺寛子助教と東京大学地震研究所の田中宏幸教授が共同で、地球ニュートリノグラフィについて、その有用性を試算により示した。現在各研究所で用いられている技術を組み合わせて新しい地球ニュートリノ観測技術を開発し、実用化により得られる成果を予測した。




 地球ニュートリノとは地球内部に含まれる放射性物質由来のニュートリノを指す。ニュートリノ科学研究センターでは現在、岐阜県にあるKamLANDで図のような方法で液体シンチレータによる地球ニュートリノの観測を行っている。

プロトンとの反応により放出された中性子は反ニュートリノの到来方向情報を保持している。しかしこの観測方法では中性子は拡散するため位置情報がぼやけ、さらにガンマ線が約40‌cm移動することにより、到来方向を算出することができないという欠点があった。

そこで今回、リチウムの同位体のひとつであるリチウム6を液体シンチレータに添加。リチウム6により中性子が拡散前に捕獲されるようになったほか、ガンマ線に代わり移動がほとんどできないアルファ線とリチウムが放出されるようになった。これにより中性子がプロトンに吸収される地点の決定精度に大幅な上昇がみられ、反ニュートリノの到来方向を算出する精度が高まることが確認された。渡辺助教は「方向検知の精度が上がり、新しい技術が実用化されれば火山内部に限らず、もっと深い地球内部をイメージングすることが可能になるかもしれない」と話す。今後助教らはリチウム6を添加した液体シンチレータの改良を行い、KamLANDと同じ程度の規模をもつ検出器への導入を目指すという。

 また渡辺助教と田中教授はミュオグラフィ技術(注1)に着目。新たな方向検知技術を含んだ地球ニュートリノ観測技術との組み合わせを提案した。さらに組み合わせて作った新技術を、KamLAND付近に存在する巨大地震波低速度領域に適用した。

具体的には領域の直上に存在するウランとトリウム(注2)濃度がマグマだまりにおける濃度と同じであると仮定。ミュオグラフィ技術を応用した計算機シミュレーションを用いることにより、新技術を適用して地球ニュートリノを観測した場合についての予測をたてた。結果として、3000t規模の検出器を10年間用いれば、領域におけるマグマだまりの存在を99・7%の以上の統計的有意度で検出できることが示された。

 地球ニュートリノ観測には物理に留まらず、液体シンチレータへ混合する物質の最適化を行うための化学、火山情報を分析するための地学など他分野の学問も重要な役割を担っている。「さまざまな分野の研究者と協力し、地球ニュートリノ観測を発展させられれば」と渡辺助教は語った。

(注1)……素粒子の一つであるミューオンにより火山内部をイメージングする技術
(注2)……ウランとトリウムは地中に存在する代表的な放射性物質
研究成果 2700284430440953542
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