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せんだい文学塾6月講座 ~プロの指摘に議論白熱~

 せんだい文学塾6月講座が先月17日、仙台文学館にて開かれた。講師は2015年に『流』で第153回直木賞を受賞した作家の東山彰良さん、アドバイザーは文芸評論家の池上冬樹さん。ゲストとして文藝春秋、新潮社、中央公論新社、徳間書店の4人の編集者が参加した。時折笑いがこぼれる、和やかな雰囲気の中講座は進んだ。




 前半1時間は、講座の参加者が事前に提出した作品の講評が行われた。まず参加者が作品についての感想を言い、それを受けて作者が説明をする。次に編集者、池上さん、東山さんの順でアドバイスをした。テキストとして用いられた5作品はそれぞれ長さもモチーフも異なるが、東山さんは「今回はどれも上手く書かれていて、褒めるべき点よりも、ここを直せばさらによくなる、という点を探した」と語った。

 「作品世界がちゃんと作られている」「たたみかける冒頭部分が上手い」というような良い点があがったり、「主人公のいる場所が分からなくなる」「物語の核となるポイントがほしい」といった指摘もなされたりして、さまざまな議論が交わされた。作品中の些細な一文から全体の構成、登場人物の設定まで、文章のプロによる的確な講評がなされ、参加者は熱心に耳を傾けていた。

 後半1時間は、「小説の効用」がテーマのトークショーが行われた。東山さんは、小説の効用は価値観を相対化する試みにあるという。読者と本との対話である読書という行為を通じて、双方の価値観が衝突し葛藤が生まれる。その中で本との着地点を見つけることで、今までにない発見ができると話した。

 台湾出身で5歳の時に日本に移り住んだ東山さん。「越境文学」と位置づけられることが多い自身の作品についても語った。どのように物語を展開させるかについては悩むことが多く、小説を書いていくうちにいくつかの展開上の分岐点に出くわすという。以前はそこで、読者をより楽しませるような展開を選んでいた。しかし結局部数は伸びず、自身も書いていて楽しいと思えなかったと振り返る。自分の心を落ち着かせるために小説を書いているという東山さんは、今では「物語が行きたい方向に連れていってもらう」ことを重視していると語った。またその他にも、引用や推敲に対する自身のルールについて話した。

 最後に、東山さんが事前に参加者から募集した質問に答えた。「小説のタイトルはどのように決めるのか」という質問に対しては、近著『僕が殺した人と僕を殺した人』を例に回答した。自分がいいと思うものが必ずしも適当であるとは限らず、他の人との話し合いや単なる思い付きからタイトルが決まることもあるという。また「小説の内容は実体験なのか」という質問には、『流』にまつわるエピソードをあげて答えた。東山さんは、実体験はデフォルメした形で物語にするが、その中でも実際の人物が不快にならないように心がけていると話した。

 講座後には東山さんのサイン会が行われた。東山さんの気さくな人柄で終始会場は盛り上がった。

 せんだい文学塾は原則として毎月第4土曜日、午後4時半から2時間、定員90人で行われる。受講料は一般2000円、学生1000円、高校生以下無料。詳しくは公式サイトを参照。
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