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【リベラルアーツサロン】第47回「言葉を科学する」 ~言葉から見える人間の心~

  第47回リベラルアーツ・サロンが先月16日、本学川内南キャンパスの大学附属図書館で開催された。今回の演目は「言葉を科学する」。本学でフランス語を中心に言語学の研究をしている文学研究科の阿部宏教授が講師を務めた。




  「言葉の科学」は、文法や語彙を学ぶ「言葉の学習」とは一線を画す学問分野であり、「科学」とあるようにそれは数学的な手法で極めて論理的になされるものである。例えば、ある言語の文字がない時代の発音を解明するためには、文字が出現した時代の文献で確認される活用語尾とその発音の関係から理詰めで推定していく、という方法がとられる。他にも、他言語との比較の中で、ある言語の背後にある規則性を見出すことや、逆にある言語から、その言語に関わった地域の人間活動の歴史をたどることもできる。

   このように「科学」される言葉の研究だが、「最近では言語間の共通性に着目し、そこから人間の心の志向性を見出すという傾向に向かっている」と阿部教授は話す。阿部教授は、「物価が上がった」という一文を例に出し、「上がった」の日本語・英語・フランス語訳がどれも「増えた」ではなく、「上がった」という言葉が使われることを指摘した。「上下」の移動は「増減」と異なり視覚的で、直感的に心に受け容れやすい。阿部教授は「このように、『とらえにくいもの』を強引に『みぢかなもの』に引き寄せて理解しようとする人間の心の働きが、言葉から見えてくる」と説明する。

 名前を聞いただけでその具体的な内容をイメージしやすい研究がある一方、言語の研究のようにそれがしにくい研究もある。しかし、言葉と人間生活は切り離せないし、なにより言葉には人の心の在りようが映し出されている。人間の本質的な理解のためにも言葉の研究は有意義であるといえる。

 身近すぎてあまり意識しないこの「言葉」。阿部教授は、「身近にある『言葉』がどのように生まれ、どのような歴史をたどり、今何が言えるのかというのを知ってほしいし関心を持ってもらいたいたかった」と話し、今回の講演を締めくくった。
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