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【研究成果】ニッケル結合タンパク質解明へ ~金属アレルギー治療に期待~

 歯学研究科黒石智誠助教と菅原俊二教授らのグループは、ニッケルアレルギーの発症に関わるニッケル結合タンパク質の正体を突き止めた。この発見はニッケルアレルギーの発症機構を解明する上で重要な手掛かりとなり、金属アレルギーの予防・治療への応用が期待されている。




 アレルギーは、体内に侵入してきた異物に対し免疫システムが過剰に反応することで引き起こされる。例えば、花粉症や漆によるかぶれもアレルギー反応が原因となって起こるアレルギー性疾患である。通常、分子量が1000~2000のものが異物として認識されるのだが、ニッケルイオンの原子量は約60であり、異物として認識されるにはとても小さい。そのため、ニッケルアレルギーがどのように起こるのかについては、長い間解明されていなかった。

 黒石助教は、細菌の菌体成分の一種であるリポ多糖がニッケルアレルギーを増強することに着目。細菌感染などによってリポ多糖が体内に侵入することで、ニッケルと結合するパートナー分子が増え免疫システムに認識されるのではないかと仮説を立てた。その後、リポ多糖を注射したマウスから血清を調製し、そこから精製した数種類のタンパク質のニッケルアレルギーの増強活性をそれぞれ調べた。その結果、血小板が産生するタンパク質の一つであるCXCL4がニッケルアレルギーを増強させることが明らかになった。CXCL4自体は60年以上前から存在が知られていたが、ニッケルイオンとの結合性やニッケルアレルギーの増強活性は世界初の発見となった。今後は、CXCL4がどのようにして、ニッケルアレルギーを増強させるのかを研究していく予定だ。

 金属アレルギーは奇病や難病などではなく、比較的身近にある病である。しかし、その発症機構や予防・治療法はわかっていない。医療の分野においてはがんなどの命に関わる病気と比べ、直接的な命の危険性が少ない金属アレルギーは優先順位が低かったため、あまり研究が進まなかったのではないかと黒石助教は考えている。現在最も効果的と考えられている対処法は金属との接触を避けることとされているが、日常生活を送る中で金属を完全に避けることは不可能だ。その上、一つの金属にアレルギー反応を示すと、別の金属に対しても交差反応と呼ばれる反応を示すことがあるため、避けるのはより一層困難となる。

 黒石助教は現在の研究室である口腔分子制御学分野に配属された際、まだあまり研究されていなかった金属アレルギーに興味を持ち、研究を始めた。その際、抗原性検査においてニッケルにアレルギーを持つ患者が多かったため、ニッケルに着目した研究をすることとなった。黒石助教は「金属アレルギーも含めて、身近な病気でも案外わかっていないことは多い。この『わかっていないこと』を明らかにして、それを少しでも実際の現場での治療に役立てていきたい」と意気込みを語った。
研究成果 5401216086952601860
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