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【研究成果】水移動と地震発生に関連性 ~地震予測に寄与の可能性~

 本学理学研究科の内田直希准教授と東京工業大学の中島淳一教授は、茨城県南西部のフィリピン海プレート上部境界付近において、プレートがゆっくり滑るスロースリップが発生すると水が浅部に排出されることを発見した。水の増加によって地震が発生しやすくなるため、今回の研究で地震の発生予測に新たな視点が加わったと言える。




 プレートが急激に滑ると地震波が発生するが、プレートがゆっくり滑るとほとんど地震波が発生しない。このようなプレートのゆっくりした滑りを「スロースリップ(ゆっくりすべり)」と呼ぶ。現在、スロースリップは同じ場所で繰り返し発生する「繰り返し地震(相似地震)」の原因になっていることも分かっている。

 今まで、スロースリップによって地震が誘発される原因については、プレート境界の領域ごとの滑る速さの違いによってプレート付近に働く差応力が変化することにのみ注目が集まっていた。しかし、内田准教授はスロースリップの際の水の移動に注目。水の移動を調べるために内田准教授は茨城県南西部の地震を調べることにした。

 この地域の地下ではフィリピン海プレートのスロースリップによってプレート境界で地震が繰り返し起こっている。一方で、同じ地域の浅部においても地震が発生していることが分かっていた。そこで、内田准教授は水があると地震波速度が地中を伝わりにくくなることを利用して、周辺の地震観測点のデータを解析した。

 解析の結果、プレートの周期的なスロースリップによって水が浅部に移動することが判明。さらに、水が移動した少し後に、プレート境界よりも地表に近い浅部において地震が発生することが分かった。この観測結果は人工的に地下に水を注入する「注水実験」の結果に似ており、スロースリップによる水の移動が地震発生に大きく関わっている可能性が高い。このことから、スロースリップの際には差応力の変化以外に水の移動にも注目する必要があると言える。

 内田准教授がスロースリップの研究を始めたきっかけは博士時代、先輩が「繰り返し地震」を発見したことだった。内田准教授は「繰り返し地震」を調べれば、スロースリップがわかるのではないかと考え、研究を始めた。研究は試行錯誤の繰り返しで、結果が出ることはあまりなかった。今回の研究においても、「繰り返し地震」を地震波の解析に用いており、当時の試行錯誤が生きた形となった。内田准教授は今後の展望について、「スロースリップと地震の間の相互作用を調べることによって、地震予測の精度を上げていきたい」と語った。
研究成果 1055608186279507010
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