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【研究成果】ダークマターの正体を調査 ~素粒子の可能性が大きく向上~

 本学理学研究科の千葉柾司教授、プリンストン大学研究チームなどからなる国際共同研究チームが、宇宙誕生初期にできた原始ブラックホール(※)による重力レンズ効果を観測した。この観測は2014年11月23日にハワイのすばる望遠鏡にあるHSC(ハイパーシュプリームカム・超広視野主焦点カメラ)を用いて行った。この観測とカメラ写真の解析の結果、地球が属する天の川銀河と、約260万光年の距離にあるアンドロメダ銀河との間に存在するダークマターが原始ブラックホールではない可能性が高いことを観測的に初めて明らかにした。


 この研究は、いまだに観測がなされていない物質であるダークマターの正体を解明するために行われた。ダークマターは光学的に観測することが不可能であるため、その正体は同じく光を用いた解析が不可能な素粒子か、原始ブラックホールのどちらかと言われている。原始ブラックホールがダークマターであるという説は1970年代にホーキング博士によって最初に提案されたものであり、実際に月の質量より軽い原始ブラックホールがダークマターであるという可能性は否定できなかった。

 そこで今回は、ダークマターが原始ブラックホールであるかどうかの検証を行うために、光すら引き寄せるブラックホールの性質を用いた観察を行うことによって、ダークマターの解析を行った。具体的には、HSCを用いてアンドロメダ銀河と天の川銀河の間にある星々を2分おきに撮影し、特定の星が撮影写真の前後で明るさが変化したかどうかを観察した。

 この変化は、ブラックホールのような大質量かつ高密度な物体によって、HSCが観測する光の経路がゆがめられて特定の星に光が集中する重力レンズ効果や、星自身の光が変光するという変光性などの要因で発生する。重力レンズの確率は非常に小さく、この効果による星の明るさの変化は一過性である。また、変光性による星の明るさの変化は繰り返し起こる。ゆえに、変光性と重力レンズ効果の光の明るさの変化の要因は区別することができる。

 しかしながら重力レンズ効果は、望遠鏡と光を歪める物体、さらには観測する星がほぼ一直線に並ばないと効果的に観測できないため、この現象が起きることは稀であり、HSCを用いて一度に大量の星々を観察して星を一つ一つ観測する必要があった。その結果、1億もの星を観測して1万5000の変光イベントしか観測することができなかった上、そのほとんどが変光性によるものであり、重力レンズ効果を確認することができたのはたったの1回であった。この回数は、本来期待されていた回数の1000分の1であった。このことから、約260万光年の距離にあるアンドロメダ銀河と天の川銀河の間に存在するダークマターが原始ブラックホールではない可能性が非常に高いということが観測的に分かった。

 千葉教授は、「ダークマターの正体が原始ブラックホールではなく素粒子であるという可能性が今回の発見で大きく向上した」と語る。この研究成果から千葉教授はダークマターを素粒子と仮定し、天の川銀河の衛星銀河にある多数の星のスペクトルを観測し、これらの星の運動を解析することによって、ダークマターの特定を目指すという。

 (※)原始ブラックホールとブラックホールの違い:原始ブラックホールとは、ビッグバン初期の数秒間に微量の物質が、ビッグバンの爆発による影響でブラックホールになったものを指す。通常、ブラックホールとは主に超新星爆発を起こした天体が、星の核をその重さによる収縮させて発生したものと考えられている。
研究成果 5215909950836723697
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