(過去記事/OC号2018)【ネタ記事】歩いて松島行ってみた ~30キロ 深夜の大移動~
https://ton-press.blogspot.com/2019/07/matsushima.html
6月某日、報道部部室にて。オープンキャンパス号のためのネタ出しの場で、ふと誰かがこんなことを言った。「ねえ、夜通し歩いて松島に行くのはどう?」。
今思えば、これは初夏の熱気にあてられて飛び出た突飛な発言だったのだろう。しかし筆者にはこの発案者を笑うことはできない。その発言に対し「それ最高ですね! 私が歩きますよ」と言ってしまったのだから。
かくして、本学学友会報道部「歩いて松島、行ってみた」作戦が始動した。目的はただ一つ、本学川内北キャンパスから松島海岸までの30キロの道のりを踏破し、そこで見た夜明けの美しさをオープンキャンパスにやってくる未来の東北大生に伝えることだ。
発案当初は多くの賛同者を集めたこの作戦。しかし日を重ねるに従って、ある部員には予定が入り、ある部員には「歩くなんて言ったっけ?」とはぐらかされ、次第に参加者は減っていく。極めつけに、作戦当日の夕方に激しい雷雨が仙台を襲った。幸いにも雨はすぐに上がったが、作戦の出鼻をくじかれた筆者の心に立ち込めた暗雲は晴れないままだった。
しかし、絶望的な気持ちで決行を宣言した筆者の元には、それでもなお5人の部員が集ったのだ。「え、みんな本気なの?」と思わずこちらから尋ねたくなったが、そんな質問は無粋というもの。我々は同じ覚悟を共にした戦友なのだから。
そんなわけで午後9時30分、我々は意気揚々と歩き出した。経路は街灯で照らされており、暗闇の恐怖に怯えることはない。しかし、灯りを生んだ人類の英知に感謝した我々はまだ気づいていなかったのだ。人類が同じくその英知で切り拓いたアスファルトの道が、首尾よく我々の体力と、そして正気を削っていたことに。
最初に異変が表れたのは10キロ地点に差し掛かったときだった。部員Kがふいに両手を大きく広げ、風を切って走り出したのだ。いわく「私飛びたいんですよお!」とのこと。くるくると舞う彼女の姿に筆者は思わず呟く。しまった。もっと早く、彼女を止めていれば。
しかし気づいたときにはもう遅い。狂気は伝染するものだ。普段は冷静沈着な部員Sが何かにつかれたように歌を歌い始め、部内きっての爽やかさを誇る部員Hは何の変哲のない場所で突然飛び上がった。
その後も仙台市を出る中間地点で待機していたM先輩が激励してくれたり、20キロ地点まで和やかに仲間の暴走をいさめていた部員Uが急に支離滅裂な発言を連発したりするなどにぎやかな場面はあったが、やがて疲れのための沈黙が場を支配した。合間に挟まれる会話も「我々はなぜこんなことをしているんだ」、「ネタ記事のためだ」、「この疲れはもはやネタではない」といったものになっていく。このままでは楽しいはずのネタ記事が松島のネガティブキャンペーンになってしまう……。
そう筆者が危惧したそのとき、海岸線から昇る朝日が我々を照らした。残念ながら夜明けを松島で迎えることはかなわなかったが、その手前の利府町で朝日を見ることはできたのだ。美しい景色に自然と歓声が上がる。松島までの残りの道を歩く一行の顔には、疲れと、そして笑顔が浮かんでいた。
夜歩きは辛いものだ。しかし私は、休憩地点の駅で笑いながら走りまわる部員Kや、日曜朝の女児向けアニメへの愛を突如熱っぽく語りだす部員Uの姿に「若さ」を感じずにはいられなかった。高校生の皆さんも、本学に入学したら仲間と共に一度夜歩きをしてみてはいかがだろうか。青春がきっとそこにあるだろう。
最後に、松島は仙台駅から電車で40分ほどで簡単に行くことができる。歩くのは嫌だという人もぜひ一度は朝の松島の絶景を味わってみてほしい。
今思えば、これは初夏の熱気にあてられて飛び出た突飛な発言だったのだろう。しかし筆者にはこの発案者を笑うことはできない。その発言に対し「それ最高ですね! 私が歩きますよ」と言ってしまったのだから。
かくして、本学学友会報道部「歩いて松島、行ってみた」作戦が始動した。目的はただ一つ、本学川内北キャンパスから松島海岸までの30キロの道のりを踏破し、そこで見た夜明けの美しさをオープンキャンパスにやってくる未来の東北大生に伝えることだ。
発案当初は多くの賛同者を集めたこの作戦。しかし日を重ねるに従って、ある部員には予定が入り、ある部員には「歩くなんて言ったっけ?」とはぐらかされ、次第に参加者は減っていく。極めつけに、作戦当日の夕方に激しい雷雨が仙台を襲った。幸いにも雨はすぐに上がったが、作戦の出鼻をくじかれた筆者の心に立ち込めた暗雲は晴れないままだった。
しかし、絶望的な気持ちで決行を宣言した筆者の元には、それでもなお5人の部員が集ったのだ。「え、みんな本気なの?」と思わずこちらから尋ねたくなったが、そんな質問は無粋というもの。我々は同じ覚悟を共にした戦友なのだから。
そんなわけで午後9時30分、我々は意気揚々と歩き出した。経路は街灯で照らされており、暗闇の恐怖に怯えることはない。しかし、灯りを生んだ人類の英知に感謝した我々はまだ気づいていなかったのだ。人類が同じくその英知で切り拓いたアスファルトの道が、首尾よく我々の体力と、そして正気を削っていたことに。
最初に異変が表れたのは10キロ地点に差し掛かったときだった。部員Kがふいに両手を大きく広げ、風を切って走り出したのだ。いわく「私飛びたいんですよお!」とのこと。くるくると舞う彼女の姿に筆者は思わず呟く。しまった。もっと早く、彼女を止めていれば。
しかし気づいたときにはもう遅い。狂気は伝染するものだ。普段は冷静沈着な部員Sが何かにつかれたように歌を歌い始め、部内きっての爽やかさを誇る部員Hは何の変哲のない場所で突然飛び上がった。
その後も仙台市を出る中間地点で待機していたM先輩が激励してくれたり、20キロ地点まで和やかに仲間の暴走をいさめていた部員Uが急に支離滅裂な発言を連発したりするなどにぎやかな場面はあったが、やがて疲れのための沈黙が場を支配した。合間に挟まれる会話も「我々はなぜこんなことをしているんだ」、「ネタ記事のためだ」、「この疲れはもはやネタではない」といったものになっていく。このままでは楽しいはずのネタ記事が松島のネガティブキャンペーンになってしまう……。
そう筆者が危惧したそのとき、海岸線から昇る朝日が我々を照らした。残念ながら夜明けを松島で迎えることはかなわなかったが、その手前の利府町で朝日を見ることはできたのだ。美しい景色に自然と歓声が上がる。松島までの残りの道を歩く一行の顔には、疲れと、そして笑顔が浮かんでいた。
夜歩きは辛いものだ。しかし私は、休憩地点の駅で笑いながら走りまわる部員Kや、日曜朝の女児向けアニメへの愛を突如熱っぽく語りだす部員Uの姿に「若さ」を感じずにはいられなかった。高校生の皆さんも、本学に入学したら仲間と共に一度夜歩きをしてみてはいかがだろうか。青春がきっとそこにあるだろう。
最後に、松島は仙台駅から電車で40分ほどで簡単に行くことができる。歩くのは嫌だという人もぜひ一度は朝の松島の絶景を味わってみてほしい。