【令和5年度報道部入部試験問題】国語
国語(解答時間30分・配点20点)
次の文章は、東北大学に通う「ぺぇ太」の一人暮らしの様子を描く『とんぺえものがたり』と、当時その成績から広く尊敬されていた東北大学生の「とん介」による『ふる単日記』の一節である。
【文章1】の『とんぺえものがたり』は、寝坊してしまったぺぇ太が1限の授業のために川内キャンパスへ向かう部分から始まる。また、【文章2】の『ふる単日記』は、とん介の春の一日の日記である。これを読んで、後の問い(問1~5)に答えよ。
◇ ◇ ◇
【文章1】『とんぺえものがたり』
おもひしより長き間眠りたりき。おどろくと気ぬるみたれど、春ぞ来けるとながむほどなく、顔をあらひて衣ぬぎかへ、室をいでむとす。昨晩は部活の先達に誘はれ飯食ひ歌ひ、夜更くるまにののしりて、そはいと楽しく、こうじけれど、家に帰れども、げぇむして眠らざりき。
けふは一限の授業があれば、今いつしか大学へ向かふべき。家より一番近き駅にとく着き、心もとなかりけれど、例の車がちょうど来しところで、「さてもありき合はせのよきことか、天は我を見捨てでたまひたりしかな」と心に思ひつつ、思ひたゆみし心地に車にのる。
思ひたゆめるためならむや、川内駅へいづるつもりが、おどろけば青葉山駅に着けり。「あな、なでふことならむや、これには授業に遅れなむ」と思ひつつしぶしぶなれど青葉山駅に川内駅へ向かふ車を待つ。
春なれどくろがねを恋ふ我が身にはかしらに雪のふる心地する
【文章2】『ふる単日記』
春の眠りはいと心地よし。とくおどろきて、米と目玉焼きを食ふことによりてのみ我があすは始まる。
けふは一限の授業があれど、ひまは未だあればあらかじめまなべり。大学の授業は高校よりもみづから考ふべければ、そはいと難く思はるれど、いとゆかしく、日ごろがいと楽しと我は思ふ。いまそろそろ室をいづべければ、昨晩したためし弁当詰め大学へ行くことにせり。日ごろ弁当をしたたむることはこうずることなれど、我が恋しき唐揚げを飽くまで詰めらるれば、そはいと喜ばしきことに、あらまほしきものなり。
大学を終ふと、さる男の、日ごろのんびりと暮らしているぺぇ太といふ者に行合ひき。かの人を見たると「大学生とはこのようなるが楽しく、あべきさまならむな」と考へさせらる。我もあのように暮らすべからむや。
◇ ◇ ◇
問1 傍線部「こうじけれど」の「こうず」の意味として正しいものを次のうちから選べ。
一、非常に疲れる
二、眠い
三、困る
問2 傍線部「心もとなかりけれど」とあるが、なぜ「心もとなか」ったのか。次のうちから選べ。
一、自暴自棄になり、遅刻を確信しながらのんびりしていたから
二、授業にぺぇ太の片思いの相手が来ているかどうかを考えて落ち着かなかったから
三、乗りたい地下鉄に間に合うかどうか不安だったから
問3 【文章1】から読み取れる地下鉄の駅の並び順を次のうちから選べ。
一、家より一番近き駅‐青葉山駅‐川内駅
二、家より一番近き駅‐川内駅‐青葉山駅
三、青葉山駅‐家より一番近き駅‐川内駅
問4 【文章1】の和歌について、後の(1)(2)の問いに答えよ。
(1)含まれている掛詞を答えよ。
(2)このときのぺぇ太の気持ちを答えよ。
問5 次に示すのは、授業で【文章1】【文章2】を読んだ後の、話し合いの様子である。これを読み、後の(1)(2)の問いに答えよ。
牛太「ぺぇ太は自堕落な生活をしているね。気持ちは分かるけれど、遅刻は感心しないなぁ。」
政宗「それに比べて、とん介は朝食も予習も済ませていて素晴らしいね。」
杜子「とん介は【文章2】の最後に『我もあのように暮らすべからむや』と述べているよ。ペぇ太をうらやんでいるのかしら。彼を手本にして大丈夫かなぁ。」
牛太「ぺぇ太は和歌で、春なのに冬のような心地がすると嘆いているけれど、受験生の皆さんには春が来るといいな。」
(1)政宗さんはぺぇ太の長所を挙げているが、彼には他にも長所がある。それは何か答えよ。
(2)【文章1】でぺぇ太は授業に遅刻してしまうが、入試に遅れないようにするにはどうするべきか答えよ。