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【書評】「君のクイズ」小川哲

 早押しクイズは、プレイヤーの知識量だけでなく、問題文の内容や傾向を推測する、論理的思考も正解のカギを握る。プレイヤーの思考が常人の理解できる範囲を超えたとき、論理的思考はまるで「魔法」のように映る。



 小川哲著『君のクイズ』は名前の通り、クイズを題材とした作品だ。主人公・三島玲央は、賞金1千万円がかかったクイズ番組の決勝で、テレビタレントの本庄絆と対戦。7問先取の対決で、6対6の同点だ。正解した方が優勝する次の問題が読まれる直前、本庄はボタンを押した。誰もがミスだと思ったが、本庄は問題を1文字も聞かずに正解し、優勝を決めた。



 三島や他のクイズプレイヤーは、やらせを疑った。しかし制作側は、本庄の「0文字押し」についてノーコメント。本庄はなぜか、表舞台から突然姿を消してしまった。三島はクイズプレイヤーとしてのプライドをかけて、優勝に至るまでの問題を1問ずつ振り返り、「0文字押し」の謎に迫る。出題の傾向や、対戦相手を研究したという本庄の発言などから三島は、自分と本庄それぞれの人生と密接に関連した、一つの仮説にたどり着く。



 本作は、クイズプレイヤーの徳久倫康さんと田村正資さんが監修した。現役プレイヤーの助言に加えて、クイズに関するさまざまな書籍を参考に執筆された。クイズの専門家たちのノウハウを取り入れたことで、早押しクイズにおけるプレイヤーの思考や推測の過程が、詳細に描写されている。



 競技クイズが持つバトル性、「0文字押し」の謎を巡るミステリー性、謎を解くにつれ明らかになる2人の人生。本作は「クイズ」を題材に、さまざまなジャンルが複合してできた作品といえる。最後にあえて、本作の肝である謎に触れるならば、それは「魔法」のようなものではなく、今までに得た知識と経験に裏打ちされた、論理的思考だ。 

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