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【インタビュー】津波避難に「アドバルーン」 避難誘導の新システム構築へ

 「アドバルーンで津波避難ビルをいち早く発見できるように」。成田峻之輔さん(工・博1)は、修士1年の時から「津波アドバルーンプロジェクト」を進めてきた。本年度博士課程に進学した成田さんに話を聞いた。(聞き手は小滝真悠)


  ◇  ◇  ◇


―「津波アドバルーン」を考案したきっかけは

 2022年の5月に鎌倉市を旅行した際、津波避難ビルが浜辺から判別しにくいことに気付いたのがきっかけです。東日本大震災では、津波の到達が地震発生後30分~数時間程度だった地域が多かった一方で、鎌倉市は、最短8分で到達すると推定されています。土地勘のない観光客であっても一刻も早く避難できるように、一目で避難場所が分かる仕組みを作りたいと考えました。



アドバルーンとは広告用の文字や
絵をつり下げた軽気球のこと。
写真は仙台市沿岸部の商業施設屋上での
実証実験(同氏提供)



―同年12月に「Tsunami Balloon」を起業した経緯は

 最初はアイデアを提案するだけのつもりでしたが、東北大学基金主催のクラウドファンディング「ともプロ! 2022」への参加をきっかけに実証実験までやってみることにしました。さらに、仙台市の防災事業を支援する「仙台BOSAI―TECH」のプログラムに採択されたことを受けて、12月に正式に事業として立ち上げました。23年1月には初めて実際にアドバルーンを打ち上げました。アイデアが形になり始めて、メディアに取り上げられる機会もありました。



―現在の研究段階は

 VR技術を活用した津波避難シミュレーターを用いて、アドバルーンによる誘導効果の有効性を検証しています。細かな条件変更が簡単にできたり、空間や時間、コスト、人員などの制約を受けにくかったりする仮想空間だからこそできる実験によって、最も効果的な掲揚方法を見つけるのが目標です。



VRを用いたシミュレーションでは、
実際にバルーンを見つけてから
津波避難ビルに上るまでの流れを体験できる
(同氏提供、ユーチューブの動画より©ZENRIN)



―苦労していることは

 この活動で最も大変であり重要でもあると考えるのは社会との連携です。例えば、防災の政策や方針に最終的な決定権を持つのは行政ですし、実際に装置を作るのは産業分野であることがほとんどです。つまり、この活動が発展するためには産官学連携が大きな鍵となります。学生だからこそ得やすい協力もあれば、実績がないがゆえに協力を得ることが難しいこともあります。そういった意味で大学主催のクラウドファンディングに採択され、ある種のお墨付きを得たことは活動が進み出す大きなきっかけだったと思います。



―今後の展望は

 防災に関する研究は、学術的成果を発端としながらも、その成果が社会に反映されてようやく実質的な価値を持ち始めると考えています。博士課程の学生として研究するだけではなく、社会実装に向けた取り組みも本格化していくでしょう。修了までに社会実装の事例を一つでも残せたらと思います。

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