※ネット限定※【インタビュー】「プロフェッショナル仕事の流儀」統括プロデューサー横山友彦氏
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11月28日、本学川内北キャンパスB200教室で13:00~14:30の間、NHK大学セミナー「プロフェッショナル仕事の流儀ー大学生応援塾ー」が開催される。登壇するのは、ドキュメンタリー番組「プロフェッショナル仕事の流儀」の統括プロデューサーで、東北大学OBでもある横山友彦氏だ。事前予約不要で、本学学生・教職員は誰でも参加自由である。講演に先駆け、インタビューを行った。(聞き手は岡野耕大)
―「プロフェッショナル仕事の流儀」の番組が生まれたきっかけは
「プロフェッショナル仕事の流儀」のキービジュアル |
番組の放送開始は18年ほど前のことになります。その立ち上げには携わっていないので、詳しい事情はわかりませんが、もう一度仕事って何だろうと問い直すことを目指してこの番組ができたと聞いています。僕が番組制作に携わるなかで、生きるうえで仕事が多くの部分を占めていることを実感しています。そして、それが人によっては、お金を稼ぐ以上の意味をもっている。また、ほかのテレビ番組と違って、色々な演出をしない番組です。取材のときには、こういう画がほしいというようなお願いをせず、ありのままを映す。正直に作る番組をやろうと立ち上がったところもあります。
―番組の中で、最も印象的だったエピソードや取材対象者は。また、それはなぜか
今思い付くのは二つあります。一つ目は、心臓外科医の天野篤さんの回です。天野さんは、上皇さまの手術を執刀された医師です。この方は東大や京大などの有名大学出身ではない、学会では珍しい経歴を持つ方で。はっきりものをおっしゃるタイプだったのもあり、学会などでは異端児的なポジションでした。でも一方ですごい技術をお持ちだったんです。上皇さまの手術の後に、僕らが番組で入らせていただいて、手術の様子や、天野さんがどうしてこういう考えになったのか番組で放送させていただきました。すると、放送後に学会での見られ方が大きく変わって、その後順天堂大学病院の院長になられている。僕らが番組で取り上げたことで、天野先生の人生は大きく変化し、医局が重視されるような業界に一石を投じることができたように感じていて。とても印象に残っています。もう一つは、あんこ職人の小幡寿康さんの回です。小幡さんは、元々皇室ご用達の菓子職人だったのですが、あることをきっかけにそれをやめ、全国のうまくいっていないお菓子屋さんに、あんこの炊き方を教えて回る放浪の菓子職人となった方です。取材の際には、小幡さんのハイエースに乗せてもらい、二か月間地方のお菓子屋さんを訪ねて回りました。この番組がなかったら、光が当たることがなかったかもしれない、人知れず頑張っている職人を発掘できたと感じました。放浪の菓子職人になった経緯もドラマチックで、反響もとても大きかったです。
―就職を控える大学生は、自分の将来の仕事やキャリアをどのように捉えるべきか
何が正解かはわからないけど、そんなに急いで決めなくてもいいと思います。私は初めから希望して、メディアとかマスコミに就職したわけではありませんでした。42歳になった今でも、自分に何が向いているとか向いていないとかは分かりません。ただ、たまたま色々な形で頼まれた仕事を、一生懸命に向き合っているうちに今の立場にいるような印象です。プロフェッショナルの方でも、初めから明確な道があってそれに沿ってやってきたという人もいますが、流されてたどり着いた仕事が自分の道だったと気づく人も多いです。それが決して早くからではない人もまた多いです。ですから、向いている向いていないみたいなことを、大学生のうちから気にする必要は無いと思います。
―就職先を決める時、趣味を仕事にすることをどう思うか
プロフェッショナルの人たちは趣味と仕事に差のない人が多いと思います。自分の職業適性を知るために、就職のときのSPIみたいなものを社会に出てからもすることがあります。でも、個人的には数字に測れないものを大切にしたい。プロフェッショナルに出演してくれている4、500人のなかにも、自分が選んだ道じゃなくても、好きだと思って貫いた結果、プロフェッショナルになっている人が多かったりします。
―今回はどのような講演にしたいと考えているか
今の大学生が、この先どんな仕事をしてみたいのか、どんな風に生きたいのか。どんなふうに社会を変えていきたいと思っているのか、など僕自身が聞いてみたいです。特に東北大の学生は、東日本大震災という、ここ1000年で最も大きな災害を経験している方もいる。そういった、今の東北大生がどのような社会を目指して仕事を考えていけばいいのか、きっかけみたいなものを提示できればいいし、僕も一緒にその場で考えたいと思っております。
―横山さんにとってプロフェッショナルとは
すごく難しいですね(笑)。こんなに難しいことを聞いていたとは。僕は自分がプロフェッショナルだとは思ってはいません。好きな言葉を借りて答えるなら、「大事なことはたいていめんどうくさい」っていう宮崎駿さんの言葉と、「ゆっくりでも止まらなければ結構進む」という、はやぶさのエンジンを作った國中均さんの言葉です。ゆっくりでも細部までこだわり、進み続けることが大事だと思っています。