【ネタ記事】編集長、落ちて滑る~全受験生の代わりに~
受験生にとって、不合格を連想させる「落ちる」や「滑る」は禁句だとされている。いわゆるジンクスだ。それらの言葉を口にすることはもちろん、思い起こさせるような言動も慎むべきとされている。聞くところによると、ドロップを舐めるのも、バナナを食べるのもだめなのだという。ドロップは「落ちる」につながり、バナナは踏むと「滑る」ためだ。何もそこまで…、と言いたくなるが、精一杯努力を重ね、あとは本番で実力を発揮するのみという受験生にとって、ゲン担ぎは死活問題なのも事実である。
あくまで合否は実力によるもの。ジンクスなど気にしないと切り捨てるのもいいだろう。その勢いのまま、受験本番を迎えてほしい。一方で、実力のある受験生が運までも味方につけられたなら、鬼に金棒である。担げるゲンは担いでおいて損はないのではないだろうか。
ここまで読んで、「受験生に禁句の『落ちる』や『滑る』という言葉を読ませておいて何を言うか」とお怒りの皆さん。安心してほしい。我らが編集長が、全受験生の代わりに「落ちる」も「滑る」も実行してきた。
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落語を演じる編集長 |
「えー、いっぱいのお運びで」。
1月某日。神妙な面持ちで部室に集まった部員4名は編集長による落語を聞いていた。
落語は、洒落や機転の利いた言葉などで「オチ」をつけて締めくくる。「オチ」と「落ち」るをかけた、落語研究部に所属する編集長自ら発案した企画である。演目は「初天神」。初天神の日、学問の神様・菅原道真を祀る天満宮を訪れた親子のコミカルなやりとりが魅力の演目だ。さすがに慣れた様子で話し始める編集長だが、はじめるまではしきりにやりにくさを嘆いていた。それもそのはず、観客はたったの4名。狭い部室であっても「いっぱい」には程遠い状況だ。心なしか、観客役の部員らも緊張した面持ちに見える。実は筆者が、この状況ならば「落ちる」だけでなく「滑る」も達成できそうだとほくそ笑んでいたのは秘密である。
「こんなことなら、親父連れてこなきゃあよかった」。
見事に演じ切った編集長。部員らは拍手喝采である。「はじまった瞬間没入した。演じ分けがすごかった」「落語を生で聞くのははじめてで、迫力を感じた」。終演後、参加した部員らからは感動の声が寄せられた。
しかし「面白かったら声を出して笑ってください」という編集長の必死のお願いも虚しく、部員たちは終始静かな様子であった。実際のところ、皆大いに楽しんでいたのだが、ポーカーフェイスな面々が集まってしまったためであろう、はたからみればドンずべりである。その意味で、本企画の目的である「落ちる」も「滑る」も無事、達成することができた。皆さんはジンクスなど恐れず、本番で思う存分力を発揮してほしい。部員一同、皆さんの健闘を心から祈っている。