【一言居士】ー2025年4月号ー
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SNSやサブスクリプションサービスによって映画との関わり方は様変わりした。鑑賞前に他人の感想をみたり、倍速で視聴したりする人も多いという。動画投稿サイトには、展開を数十秒にまとめたネタバレ動画が流れている。効率よく、間違いなく、面白い作品と出会いたいのだ▼こうした風潮は「タイパ」思考の極致として批判されがちだ。しかし、いつでもどこでも多くの映画に触れられる今、その中から作品を選ぶにあたり「タイパ」を意識するのは自然なことともいえる▼「エンターテインメントは、情報ではなく、体験だと思っています」。「劇場版モノノ怪 第二章 火鼠」の公開記念舞台挨拶で声優の神谷浩史氏はこう語った▼映画を数行の文章や短時間の動画として、いわば「情報」として消費することと、自分の感覚を通じて「体験」することは、全くの別物である▼スクリーンに広がる鮮やかな色彩と迫力ある音響に圧倒されながら、やはりこの没入感は何物にも代えがたいと実感する。今だからこそ、この体験を大切にしたい。
(文責・藤野こころ)